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再会した院長先生は、私の手を握りしめ、ボロボロと涙をこぼした。
「ソフィアや……。こんなに大きくなって。あの日、力がないばかりに、あんたをあんな恐ろしい公爵へ引き渡してしまった……。情けない私を、どうか許しておくれ……」
シワの刻まれた温かい手に、胸が熱くなる。 オリジナルのソフィアは、孤独ではなかった。この場所で、確かに愛されていたのだ。
その夜。私は深い眠りの中で、彼女が残した記憶を追体験した。
炎に包まれる、聖国ルミナリスの王城。幼いソフィアに、母妃が白いピアスを託す。
「このピアスは、あなたの聖力を封じる枷であり、本来の姿を隠す魔法。いい、ソフィア。聖力を知られてはだめ。力を見せれば、あなたは利用されるだけよ。……行きなさい。生き延びるのよ。愛しているわ」
場面は一転し、公爵家の薄暗い地下室へ。
「なぜ出さぬ! 聖国の王族なら、聖力があるはず……! 我が軍の兵士を治療するのだ!」
公爵が振るうのは、魔法の鞭。 肌に傷一つ残さないかわりに、神経を直接焼くような激痛だった。そして、18歳の誕生日の夜。「聖力は18歳までに発現する」という言い伝えの期限。公爵は彼女を散々打ち据えた後、忌々しげに舌打ちした。
「……ふん、期待外れも甚だしい。まさか不良品(ハズレ)であったとは。……ならば、せめて一刻も早く殿下の子を成せ。我が摂政になるための、駒になれ」
吐き捨てて去っていく足音。 オリジナルの彼女の身体は、そこでついに限界を迎えた。その空白に、現代の「私」の魂が流れ込んだのだ。
真っ白な空間で、座り込むオリジナルのソフィア。私は彼女を、強く、優しく抱きしめた。
「……つらかったわね。一人でよく頑張ったわね、ソフィア」
彼女は少しだけ微笑み、私の耳元で囁く。
「……私にはもう、あまり時間が残っていないみたい。……あとは、お願い。……あなたなら、きっと……」
声は、風に溶けるようにかすんでいく。
「待って! 行かないで! まだ……聞きたいことが、たくさん……!」
彼女の体はまばゆい光の粒子となって消えていく。
『ソフィア・セレネ・ルミナリス』という本当の名前が、私の中に流れ込み、溶けていった。
#溺愛
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