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鬼舞辻無惨の拠点、ついに判明。
その場に集められた柱たちと主要隊士。
お館様(産屋敷耀哉)はすでに亡くなっており、采配はあまねと輝利哉に引き継がれていた。
新たな決戦部隊を編成するため、告げられた指令はただ一つ。
「突入部隊には“生還の見込みが薄い者”が含まれます。
これより“志願”により選出します。強制はしません」
場が凍る。
そして、最初に一歩を踏み出したのは──凩 侃だった。
「俺が行く」
静かな声だった。
だが、響きは鋭く、誰よりも速く空気を切った。
⸻
「馬鹿か、お前は!!」
風柱・不死川実弥が立ち上がる。
「無惨とやり合うのに、お前みたいな凍てついた野郎を前に出してどうする!」
「俺が、前に出なければ……誰が出る」
「他の奴が出りゃいいだろうが!!」
そのとき、義勇が口を開く。
「……凩は、前に出る覚悟を決めている」
「お前まで何言ってんだ、冗談じゃねぇ……!」
恋柱・甘露寺は泣きそうな顔で言う。
「やだよ……もう誰も死んでほしくない……!」
蛇柱・伊黒は黙ったまま、侃を睨んでいた。
「俺は、無惨に斬り込む役をやる。
凍らせる時間があれば、再生が止まるかもしれない。
そうすれば、炭治郎たちが“決める”までの隙を作れる」
「そんなの、あんたが死ぬって前提じゃない……!」
「死ぬことは望んでない。でも、生き残るために、俺は戦う」
⸻
その夜、侃は一人で刀を研いでいた。
そこに、霞柱・時透無一郎がふらりと現れる(※別時間軸で生存している設定)。
「お前って……誰かのために動いてるようで、実は、誰かに“なりたい”んだろ」
「……猗窩座か?」
「うん。でももう、そんなのどうでもいいんじゃない?
今のお前は、“凩 侃”だろ?」
侃は何も言わなかった。
ただ、月を見上げて呟く。
「……風は止まってない」
⸻
決戦当日。
突入部隊の最前列に立つ侃。
その背中を、誰もが見つめていた。
「ありがとう。……俺は、俺として、最後までやりきる」
振り返らず、侃は走り出した。
それが、彼の選んだ“生と死の境”だった。
──続く、決戦の地へ──