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いや、ちょっと、これきつ過ぎじゃね?
なんか、救いが無いっていうか? 辛すぎないか?
そう思った私、観察者の思いを踏みにじるように、お婆ちゃん、コユキが動けないまま口に出した言葉と言えば、
「あ、そう! で? 何が言いたいのよ!?」
えっ!? うそでしょ? であった……
インヴィディアが顔に哀れみを浮かべつつ言った。
「そうか、我が人生の悲哀、その中に多岐(たき)に渡って含まれる嫉妬に気付かぬとは…… 当代の聖女は、残念ながら理解力に欠ける…… そういう事であろうな……」
そして、シリアスになってしまいキャラ崩壊気味な自分を鼓舞するかの様にワザとらしい言葉を続けるのであった。
「ま、姉ちゃんみてぇな、堅気(かたぎ)の衆には、無理無ぇー事だけどな! 『嫉妬』ってーのはこん位重たい事って事なんだわー、お、分かったかい?」
コユキはやれやれと言った表情を浮かべながら、本当にやれやれと言った風情で、赤ペンセンセイの様な添削を始めるのであった。
「あのねぇ、そもそもアンタって『嫉妬』のインヴィディア? だよねぇ? 今あんたに送られたイメージの中で嫉妬が無かった件! についてなんだけどぉ!」
切り口が予想外! なんだってんだ? お婆ちゃん!
「あれね? アンタが可哀想な悲しい幼年期? 少年期を送って来たのは分かるんだけど…… それは、ごめんね、嫉妬じゃなくて、『羨望(せんぼう)』なのよね~♪」
「何! テメェに何が分かるって言うんだぁ! この小娘がぁ!」
コユキは続けて答えた。
「うん、アンタにとって小娘だろうが、まぁ、アンタより賢かったって事だろうね…… ゴメンだけど…… んであんたの話は『羨望』だけで、嫉妬の欠片も感じられないんだけど…… どうすんの、これ? アンタ責任とれるの?」
「んがぁぁぁー、んじゃ、あれだ! 俺が子供の頃から感じてた、皆が持っている、家庭の暖かさだとか、流行(はやり)の玩具(オモチャ)だとか、同じレベルの友達だとか…… 俺はぁ、嫉妬したぜぇえ~!」
コユキは動けないまま、面倒臭そうに言った。
「だから! それは! 羨望だってば! アンタ馬鹿なの?」
コユキの怒りもそのままに、インヴィディア、たぶん馬鹿は言葉を重ねた。
「ん、ん、で、でもさ…… 俺、たった一人の理解者…… 女房を悲しませた兄貴、いや、あの野郎の事は本気で許さねぇ! って思っているんだよ! これって嫉妬じゃねぇのか?」
答えてコユキが言った。
「ふむ、そうだね? そもそもアンタは何で、その男に怒っているのかな? ねぇ、何で?」
「いやっだって! 俺はあいつの格好良さに惹かれていたんだよぉ! んなのにあの野郎は、そんな俺の淡い気持ちを踏み躙る(にじる)様に、お、俺の一番、いや、唯一大切な存在を踏み躙りやがったんだぜぇ、普通に考えて…… 許せねぇーだろぅが?」
「ふむ…… たぶんだけど、アンタの中でのヒーローがアンタの想像と違う行為を選択した事に憤慨してんでしょ? アンタは? だったらその怒りはそれこそ『嫉妬』じゃなくて、アンタの青臭い『憧憬(しょうけい)』が裏切られただけじゃないの!」
「しょ、憧憬?」
言葉を失いそうな表情で、ギリギリ答えを捻りだしたインヴィディア……
しかし彼は、頑張って最後の言葉を大きく叫んだのであった!
「俺が、俺みたいなモンをを愛してくれた、たった一人の妻に向けた愛は、それだけはどんな言葉でも置き換えられない、純粋な『愛』だ! それをあの野郎が…… 兄貴が、力尽くで踏み躙ったんだ…… くっ! アイツがもしそれを望んだのだったら、俺だって喜んで身を引いただろう、でも、兄貴は…… あのクズ野郎は、アイツの気持ちなんか考えもせずに、自分勝手な感情だけで、アイツを汚しやがったんだぜぇ!!!!」
コユキは固まったまま、『嫉妬のインヴィディア』に答えた。
「アンタ? 今言った事のどこに『嫉妬』があんの? アンタが言ってるのって、それ『慈愛』じゃないの?」
「え? じ、慈愛?」
驚いた顔のインヴィディアにコユキがやれやれと言った顔で動けないまま提案したのである。
「しょうがないねぇ、どこまで見たのか知らないけどさ? 続きを見てみなさいよ? 私の、えっと、嫉妬だっけ?」
そう言われてヨロヨロと、下半身は力を失いプルプルと嫉妬のインヴィディアは、コユキ、お婆ちゃんに近付いて行き、その真直ぐな瞳を覗き込んだ。