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朝霧が、薄く立ちこめていた。
ノアは、黙々と荷物をまとめている。
その動きは、無駄がなくて、機械みたいだった。
「……出発する」
それだけ言って、歩き出す。
レイヴンは、少し遅れて後を追う。
その背中が、やけに遠い。
⸻
道中。
魔物の気配。
「……私が行く」
ノアは、即座に前に出る。
「待て、俺も――」
「……一人で十分」
ノアは振り返らない。
レイヴンは、拳を握る。
⸻
戦闘。
ノアは、相変わらず強い。
でも――
無茶が、常軌を逸していた。
わざと防御をしない。
致命傷ギリギリの攻撃を、何度も受ける。
「ノア!!」
レイヴンが割って入る。
剣で魔物を斬り伏せる。
「……邪魔」
「邪魔でもいい」
レイヴンは、ノアの前に立つ。
「……お前が死ぬほうが、よっぽど迷惑だ」
ノアは、首を傾げる。
「……なぜ?」
その一言が、胸に突き刺さる。
⸻
小さな村。
宿屋。
ノアは、窓際で一人、地図を見ている。
アイリスが、そっと声をかける。
「……ノア、少し休みましょ」
「……不要」
「……あなた、寝てないでしょ」
「……問題ない」
アイリスは、唇を噛む。
⸻
夜。
レイヴンは、眠れずに外に出る。
月明かりの下。
ノアが、井戸のそばに立っていた。
「……眠れないの?」
「……見張り」
レイヴンは、隣に立つ。
「……なあ」
「……何」
「……俺が死にかけたとき、
お前、泣いてたよな」
ノアは、少し考える。
「……そうだった?」
心臓が、ぎゅっと潰れる。
「……あのとき、お前……」
「……記録にない」
その言葉で、
レイヴンの喉が詰まる。
⸻
沈黙。
風の音だけがする。
レイヴンは、ぽつりと呟く。
「……それでも、俺はお前が好きだ」
ノアは、驚かない。
ただ、淡々と聞いている。
「……その感情、合理的じゃない」
「……知ってる」
「……私、何も返せない」
「……分かってる」
レイヴンは、少し笑う。
「……それでも、いい」
⸻
翌日。
街道で、黄昏の徒の斥候に遭遇。
戦闘になる。
敵の魔法が、ノアを狙う。
「ノア、避けろ!!」
ノアは、わざと動かない。
――ドンッ!!
衝撃波。
ノアが吹き飛ばされる。
「……っ……」
地面に叩きつけられる。
⸻
レイヴンが、敵を瞬殺する。
そして、ノアに駆け寄る。
「……何考えてるんだ!!」
珍しく、声を荒げる。
「……別に」
「……お前、死にたいのか!?」
ノアは、真っ直ぐ見る。
「……死んだら、楽になるかも」
その言葉に、
レイヴンは完全にキレる。
「……ふざけるな!!」
ノアの肩を掴む。
「……俺は……
お前がいない世界で生きるくらいなら……
また死にかけるほうがマシだ!!」
ノアの目が、ほんの一瞬だけ揺れる。
⸻
その夜。
ノアは、一人で外に出ようとする。
レイヴンが、腕を掴む。
「……どこ行く」
「……一人になりたい」
「……ダメだ」
「……なぜ」
レイヴンは、歯を食いしばる。
「……お前、
自分がどれだけ大事か、
分かってない」
ノアは、黙っている。
⸻
レイヴンは、震える声で言う。
「……俺はな……
お前の感情が戻らなくても……
一生片想いでも……」
「……それでも、そばにいる」
ノアは、ゆっくり言う。
「……それ、無駄」
「……無駄でもいい」
レイヴンは、ノアの額に、自分の額を当てる。
「……俺が勝手にやってることだ」
ノアの胸が、ズキッと痛む。
理由の分からない痛み。
⸻
ラスト。
ノアは、焚き火を見つめている。
「……誰かが私を大切にしてる。
それは分かるのに、
どうして私は、
その気持ちに触れられないんだろう。」
遠くで、
黄昏の徒の紋章が、また浮かぶ。