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夜明け前。
ノアは、一人で荷物をまとめていた。
焚き火は、まだ赤く残っている。
音を立てないように、
剣を布で包む。
カイの指輪を、しばらく見つめてから、
ポケットにしまう。
「……これでいい」
誰にも聞かせない声で、呟く。
⸻
その頃。
レイヴンは、嫌な予感で目を覚ましていた。
「……ノア?」
寝床に、彼女はいない。
胸が、ざわっとする。
⸻
ノアは、森を歩いていた。
夜霧の中。
「……私は、もう誰のそばにもいちゃいけない。
守れない。
想えない。
それでも人を傷つける。」
胸が、ズキッと痛む。
でも、その痛みすら、
どこか他人事みたいだった。
⸻
村の外れ。
ノアは、簡単な結界を張る。
紙切れに、短い文字を書く。
「ごめん。
先に行く。」
それだけ。
⸻
一方。
レイヴンは、アイリスを叩き起こす。
「……ノアがいない」
アイリスの顔色が、変わる。
「……やっぱり……」
「……やっぱりって何だよ」
「……禁呪の反動、
自己否定が強く出るって言ったでしょ」
レイヴンは、歯を食いしばる。
「……あいつ、また一人で死ぬ気だ」
⸻
追跡。
ノアの魔力痕跡は、
意図的に消されていた。
「……本気で逃げてる」
レイヴンは、走る。
無茶な体で。
傷が開いて、血が滲む。
⸻
崖の上。
ノアは、谷を見下ろしていた。
風が、髪を揺らす。
「……ここから落ちたら、
たぶん……全部、終わる」
そのとき――
「ノアァァ!!」
背後から、叫び声。
レイヴンが、走ってくる。
ノアは、振り返らない。
「……来ないで」
「……なんでだよ……」
「……私がいると、
あなた、また死にかける」
レイヴンは、息を切らしながら言う。
「……それでもいい」
「……よくない」
「……よくなくても、いいんだよ!!」
⸻
ノアは、静かに言う。
「……私は、
誰かに守られる資格、ない」
「……感情もない」
「……一緒にいたら、
あなたの人生、壊す」
レイヴンは、震える声で言う。
「……壊れてるのは、
お前の自己評価だろ……」
一歩、近づく。
「……俺はな……
お前と一緒にいる未来、
選んだんだよ」
⸻
ノアは、初めて振り返る。
「……どうして……」
「……好きだからだ!!」
叫び。
「……お前が感情なくても!!
想ってくれなくても!!」
「……それでも、俺は!!」
ノアの目が、揺れる。
⸻
その瞬間。
黄昏の徒の魔法陣が、地面に浮かぶ。
「……あ……」
ノアの足元が、崩れる。
「ノア!!!」
レイヴンが、手を伸ばす。
ギリギリ、指先が触れる。
⸻
でも――
ノアは、わざと手を離した。
「……ごめん」
その一言だけ残して。
谷に、落ちていく。
「ノアァァァァ!!」
⸻
静寂。
風の音だけが、残る。
レイヴンは、崖に崩れ落ちる。
「……なんでだよ……」
拳で地面を殴る。
血が滲む。
⸻
アイリスが、遅れて到着する。
「……ノアは……?」
レイヴンは、声が出ない。
ただ、首を振る。
アイリスは、唇を噛む。
「……生きてる可能性、ある」
「……あの子、
あんな簡単に死なない」
⸻
ラストカット。
深い谷底。
ノアは、川に流されながら、
意識を失っていく。
指輪が、淡く光る。
「……私は、逃げた。
みんなの優しさから。
そして……
生きる理由から。」
画面暗転。