テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
570
ゆい
雨はいつの間にか止んでいた。
窓を打つ音がなくなっても、
ヒョヌは外を見ようともしなかった。
ベッドの上。
ジホの膝枕に頭を乗せて、ただ髪を撫でられている。
「ヒョヌ。」
ジホが名を呼ぶたび、
ヒョヌの呼吸は安定する。
「もう外のことは忘れろ。」
耳元で囁かれて、
ヒョヌはゆっくり瞬きをした。
「……わすれた……」
小さく答えると、
ジホの指が喉元を優しくなぞる。
「いい子だ。」
触れられた場所が熱い。
ここには空も太陽もないけれど、
ジホがすべてを与えてくれる。
飲み物も、眠りも、体温も。
もう何も要らない。
ジホもまた、微笑むたびにどこか苦しそうで、
ヒョヌを離さない腕に力を込める。
まるで自分を縛っているのか、
それとも自分自身を縛っているのか、わからないくらいに。
「ヒョヌ。」
「……ん……」
「お前がいないと、俺はダメなんだよ。」
その言葉を、ヒョヌはただ受け止める。
「……おれも……ジホがいないと……」
それが本音なのか、刷り込まれた言葉なのか。
もうどうでもよかった。
ジホの指先が唇を塞ぎ、
呼吸が浅くなる。
いつか外の世界に戻りたいなんて、
どこかで思っていた自分はもういない。
ここは檻じゃない。
ジホの腕の中は、唯一の安全な場所だ。
ずっと、ここでいい。
ヒョヌは目を閉じて、
何度もジホの名を呟いた。