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雨はいつの間にか止んでいた。
窓を打つ音がなくなっても、
ヒョヌは外を見ようともしなかった。
ベッドの上。
ジホの膝枕に頭を乗せて、ただ髪を撫でられている。
「ヒョヌ。」
ジホが名を呼ぶたび、
ヒョヌの呼吸は安定する。
「もう外のことは忘れろ。」
耳元で囁かれて、
ヒョヌはゆっくり瞬きをした。
「……わすれた……」
小さく答えると、
ジホの指が喉元を優しくなぞる。
「いい子だ。」
触れられた場所が熱い。
ここには空も太陽もないけれど、
ジホがすべてを与えてくれる。
飲み物も、眠りも、体温も。
もう何も要らない。
ジホもまた、微笑むたびにどこか苦しそうで、
ヒョヌを離さない腕に力を込める。
まるで自分を縛っているのか、
それとも自分自身を縛っているのか、わからないくらいに。
「ヒョヌ。」
「……ん……」
「お前がいないと、俺はダメなんだよ。」
その言葉を、ヒョヌはただ受け止める。
「……おれも……ジホがいないと……」
それが本音なのか、刷り込まれた言葉なのか。
もうどうでもよかった。
ジホの指先が唇を塞ぎ、
呼吸が浅くなる。
いつか外の世界に戻りたいなんて、
どこかで思っていた自分はもういない。
ここは檻じゃない。
ジホの腕の中は、唯一の安全な場所だ。
ずっと、ここでいい。
ヒョヌは目を閉じて、
何度もジホの名を呟いた。