周囲の仲間や愛しいオーリ、それに自分の体に起こった変化が消え失せ、元のギンブナの姿に戻った事を確認したヒットは、安堵の吐息を漏らしながら誰にともなく問い掛けたのである。
この声に答えたのは、何故か『鑑定』の効果が魚やトンボにまで拡張されてしまったのに、頑張って昔を思い出し『解除』を伝えた大活躍中のヘロンである。
「ん? 『武装』は『武装』でもドラゴのヤツとちょっと違うな? 武装の表記の後ろになんか書いてあるぞ! 『アーキ』? 何だろうか?」
ナガチカはここに来て発言を再開するのであった。
「『アーキ』? ギリシャ語で『起源』、だな…… スキルが複数の悪魔に同時に発現して片方が『起源』…… はっ! も、若しかしてっ! な、なあヘロンっ! 誰か他のメンバーも見てみてくれないかな! そうだっ! 私を『鑑定』してくれっ! 頼むよっ!」
ヘロンは無言のままナガチカに視線を向けるとやや置いてから口に出す。
「『鑑定』、ふむ、固有名詞は『ナガチカ コウフク』、スキルは『繁殖者(ブリーディング)』、種族は『ヒト』、職業は『聖戦士』ですが、レベル? 何でしょうねコレ? 58/80ですって? 後は、STR96、DEF78、AGL28、MAP102、ふむ? 何でしょうか、意味不明ですよね? これ以上判りませんが…… これで、良いですか?」
ナガチカは思わず漏らす。
「えっ? STRにDEF力と防御?、それにアジリティに、れ、レベルですってぇ? まるでゲーム、みたいな…… MAPってヤツだけ全く判りませんけど…… 何だろう? ゲーム脳で考えれば地図機能、マップ作成能力、かな? でも私は地図とか地理とか苦手だしぃ…… はて?」
ナッキの声だ。
「ねえ、ナガチカぁ! そのゲームって何なのぉ?」
「あ、ああ昔有った娯楽ですよ、余暇を楽しむ為に考え出された、言わば仮想現実の世界で過ごすツールですね、今は無くなってしまいましたが私が子供の頃には隆盛を極めていたんですよ…… それを題材にした漫画や小説も沢山ありましたよ…… 私が好きだったのは『異世界転生』とかゲームの世界に取り込まれてしまう『帰りたい系』、それに不遇な立場から痛快に逆転劇を見せてくれる『悪役令嬢系』や『現代知識無双系』でしたねぇ、ああ、勿論『ざまぁ系』も嫌いじゃなかったですけどね! そんな話の中ではですね、今の自分の習熟度を表す、レベルや身体能力を数値化してくれるステータス、後はチートな能力としてのスキルとか、良く使われていたんですよ! 幼い頃って私ゲーマーでしてね、このハタンガに来る数年前までは『読み専』、辛口レビュワーだったんですよぉ~、いやぁ~、懐かしいなぁ!」
ナッキはギンブナだ、漫画も小説も知らないだろうしナガチカの説明が伝わるとは思えないのだが……
「話を聞いても全く判んないや、でも、そうなんだね」
やっぱり…… 判らないよね。
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