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「圭ちゃん、先行ってるよ」
「あぁ、直ぐ行くから先行っててくれ」
駅へ向かう学校の帰り道、マナはダッシュで先に走って行ってしまった。
プルルルル――プルルルル―――
電話がかかってきたのでスマホを見ると意外な人物からだった。
『もしもし――』
『もしもし、元気?』
数か月ぶりに聞く、詩織さんの声だった。
『俺は元気です。詩織さんこそ元気でした? 全然連絡をくれないから心配してたんですよ」
『心配してくれたんだ。ありがとう」
『当たり前じゃないですか! それより今どこにいるんですか?』
『空港にいるわ』
耳をますと、空港でよく耳にするアナウンスが聞こえてきた。
『空港? どうしてそんなところに?』
『実家に帰って、向こうで就職をしようと思ってるの』
『実家って確か、島根県ですよね?』
『そうよ』
『もうこっちには戻って来ないんですか?』
『戻って来るつもりはないの。向こうで就職して、結婚して一生島根で生きて行こうと思ってる』
『なかなか会えなくなりますね?』
『そうね、もう2度と会えないかもしれないわね』
『そんな寂しいこと言わないで下さい』
『寂しがってくれるんだ』
『本当に寂しいですよ。短い間だったし、あんな形ではあったけど、俺は本当に詩織さんと付き合っていたと思ってます』
『優しいのね。そういうところもひっくるめて、圭太くんあなたが好きよ』
『俺も詩織さんのことすっ――』
『それ以上はダメ! あなたにとって私は人生の汚点なの。だってあなたは、私の浮気相手だったんだから。だから、私といた全てのことを忘れて! 私も圭太くんと一緒にいた時間は忘れる。そうすれば、何もかもなかったのと同じになる』
『何言ってるんですか! 俺は汚点だなんて思ってない! 俺と詩織さんは純粋に付き合っていた。世の中の人が認めてくれなくても俺は詩織さんのことが好きです!』
『ありがとう。それじゃあ、もう出発の時間なんで行くわね』
『詩織さん、俺―――』
『圭太くん――好きよ』
『俺もです』
『圭太くん――会いたいよ』
『今すぐ会いに行きたいです』
『でも、さよならしなきゃ――』
『したくないです』
『また会おうね』
『詩織さんが望むなら、どこにだって会いに行きます』
『ありがと――』
それから俺と詩織さんか会うことは2度となかった。