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仕事が一段落したある日。
「なぁローレン」
『何』
「温泉行かね?」
『……急だな』
「たまには外出ろ」
『配信者が言う台詞か?』
「うるせぇ、癒やしが欲しいんだよ」
結果、二人で電車に揺られて温泉街に来ていた。
『……思ったより人多い』
「観光地だしな」
『こういうの久しぶりだなあ』
「家とスタジオの往復だもんな」
旅館に着いて、部屋に案内される。
畳の匂い。
窓の外には山と川。
『……静かだな』
「配信部屋と真逆」
『それな』
荷物を置いて、一息つく。
『……先に風呂行く?』
「行く」
『即答じゃん』
「温泉目的だし」
それぞれ風呂から戻ってくると、少しだけ空気が変わる。
『……のぼせた』
「顔赤い」
『そっちもな』
「うるせぇ」
浴衣姿で、窓際に座る。
『……外、夜景見える』
「ほんとだ」
『こういうの』
『誰かと来るもんなんだな』
「今さら?」
『仕事だとホテルばっかだし』
「……まぁな」
しばらく無言で景色を見る。
『……くっさん』
「ん」
『なんで温泉誘ってくれたの?』
「……なんとなく」
『嘘』
「……最近さ」
「夜、変なこと考えてただろ」
『……』
「だから」
「気分変えたかった」
ローレンは少し黙る。
『……優しいの、やめろ』
「なんで」
『慣れる』
「慣れろ」
『……強いな』
ローレンは、そっと葛葉の袖を掴む。
『……こうしてると』
『本当に旅行って感じする』
「当たり前だろ」
『……仕事じゃないのが』
『新鮮』
「俺も」
夜ご飯の時間になって、二人で食堂へ行く。
『……量多くない?』
「温泉旅館はこうだろ」
『くっさん、絶対残す』
「残さねぇ」
『昨日も言ってた』
「昨日は違う」
『何が』
「……胃の調子』
『弱』
「黙れ」
部屋に戻って、布団が二つ並んでいるのを見る。
『……修学旅行みたいだな』
「例えが学生」
『楽しいんだもん』
「ならよかった」
電気を消して、布団に入る。
『……くっさん』
「ん」
『温泉誘ってくれて』
『ありがとな』
「……どういたしまして」
『……また来よう』
「そのうち」
『……約束な』
「約束」
外では、川の音が小さく響いていた。
『……おやすみ』
「おやすみ」
仕事も配信もない夜。
ただ一緒にいるだけの、静かな時間だった。
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