テラーノベル
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会社のエントランスを飛び出し、滉斗は元貴の姿を探した。人通りの多い大通りには、元貴の姿は見当たらない。
焦る気持ちと、元貴に会えるかもしれないという期待が入り混じっていた。
その時、手にした手帳が僅かに開いていることに気づいた。何気なく、その開いたページに目をやった。
そこには、元貴の几帳面な字で日々の仕事のメモが細かく書かれていた。
商談のポイント、顧客からの要望、新しい企画のアイデア。びっしりと書き込まれた文字から、元貴がどれほど真面目に、そして一生懸命に仕事に取り組んでいるかが伝わってくる。
(元貴って、こんなにストイックに仕事してるんだな…)
思わずページを捲ると、仕事のメモの合間に、プライベートな日記のような記述が目に飛び込んできた。
『2025年7月3日(金)晴れ』
滉斗の指が、ピタリと止まった。それは、元貴と初めて会った日の日付だ。心臓がドクン、と大きく鳴る。
『人生で初めて、見知らぬ人の家に泊まることになった。最初はどうしようかと思ったけど、彼がすごく優しくて、安心した。名前は滉斗さん。同じ会社の人で、しかも同い年だった。こんな偶然があるなんて、びっくりした。』
滉斗の目は、文字を追うごとにどんどん見開かれていった。
『滉斗さん、すごく話しやすくて、面白い人だった。朝ごはんも作ってくれて、嬉しかったな。連絡先も交換できた。また会いたい。』
そして、さらにページをめくると、昨日の日付の記述があった。
『7月22日(月)雨のち曇り』
滉斗の指先が、わずかに震える。
『滉斗さんと映画を観た。色々あり過ぎて心臓が爆発しそうだった。それにあのキスシーンは本当に焦った。滉斗さんの顔をまともに見られなかったし、帰りに滉斗さんが俺の唇に触れた。』
『出社してすぐに滉斗さんに会った。思い出して思わず逃げちゃった。涼ちゃんに相談したら、滉斗さんのこと好きなんじゃないかって言われた。僕は、滉斗さんのことが好きなんだと思う。』
「っ……!」
滉斗は思わず息を呑んだ。元貴の、素直な気持ちがそこに綴られていた。避けられていた理由が、嫌いだからではなく、自分を「好き」だからこその「恥ずかしさ」だったなんて。
滉斗の目に、熱いものがこみ上げてきた。あの時、自分が抱いた不安や絶望が、一気に吹き飛んでいく。
同時に、元貴の純粋な気持ちに、胸が締め付けられるような切なさと、込み上げるような喜びを感じた。
手帳を握りしめ、滉斗は再び元貴を探して駆け出した。
日記の日付、私が書いたときの日付ですね。
1ヶ月以上あっためてたこの話……。待たせてごめんなさい😌
コメント
7件
八月二十八日(木)曇り このままでは、私が口角が上がりっぱなしのキモい人だと思われるので、家でもマスクをつけることにした。
生き返った
わわわ…! 本音書いてるの可愛すぎる…🥹💓 私も日記書こうかな(?) 書くことありすぎて1ページにびっしり書いちゃうかもだけど(?)