テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
滉斗は、汗だくになりながらも走り続けた。元貴の家までの道順は、一度行ったことがあるから頭に入っている。会社を出て大通りを真っ直ぐ、駅前のロータリーを抜けて…
会社の最寄り駅の駅ビル前。見慣れた後ろ姿が、ゆっくりと歩いているのを見つけた。
「元貴!!」
滉斗は、必死に声を振り絞って叫んだ。
元貴は、後ろから聞こえる聞き慣れた声と、駆け寄る足音に、ビクッと体を震わせて振り返った。
そこにいたのは、息を切らし、肩で息をしながら自分に向かって走ってくる滉斗だった。
その姿に、元貴は驚きで目を見開く。
同時に、まさかこんな場所で会えるとは思っていなかった嬉しさと、昨日までの恥ずかしさが、再び胸に込み上げた。元貴の頬が、みるみるうちに赤く染まっていく。
滉斗は元貴の目の前まで駆け寄ると、荒い息を整えながら、手に持っていた手帳を差し出した。
「これ…元貴の、忘れ物…」
元貴は、自分の大切な手帳だと気づき、慌ててそれを受け取った。
「あ…ありがとうございます…!」
そうは言ったものの、元貴は恥ずかしさで、滉斗の顔をまともに見ることができない。俯きがちに、手帳をぎゅっと握りしめる。
滉斗はそんな元貴の様子に、手帳に書かれていた言葉を思い出した。悩む元貴の気持ちが、痛いほど伝わってきた。
滉斗は迷うことなく、元貴の手をそっと取った。そして、その手を優しく握りしめる。元貴は、突然の行動に、またしてもビクッと体を震わせた。
「元貴」
滉斗は、元貴の目をしっかりと見つめるため、少し屈んで、元貴の顔を覗き込んだ。
顔と顔が、驚くほど近い。息がかかるほどの距離に、元貴の全身の血が再び沸騰したように熱くなる。心臓がドクドクと高鳴り、顔がカッと熱を持つ。
「っ……!」
元貴の顔は、瞬く間に真っ赤に染まった。滉斗の真剣な眼差しから逃れるように視線を逸らそうとするが、滉斗の手が元貴の手をしっかりと握りしめていて、動けない。
滉斗は、元貴の赤くなった頬を優しい眼差しで見つめ、口を開いた。
「週末は、ごめん…」
滉斗の第一声は、意外にも謝罪の言葉だった。元貴は驚いて、息を呑む。
「あの時、俺、ちょっと…その、勢いで…」
滉斗は、少し照れたように視線を外し、繋いだ手に力を込めた。
「…嫌だったよね、」
恐る恐る尋ねる滉斗の言葉に、元貴はハッとしたように、繋がれた手を握り返した。そして、首をゆっくりと横に振る。嫌なわけがない。むしろ、嬉しくて、たまらなかった。
元貴は、恥ずかしさで顔を真っ赤にしたまま、震える声で話し始めた。
「嫌じゃ…なかった、です…むしろ、その…」
元貴は、勇気を振り絞って滉斗の目を見上げた。潤んだ瞳が、滉斗の視線と絡み合う。
「俺、あの後…ずっと、滉斗さんのこと、考えてて…」
その言葉に、滉斗の表情が、はっきりと和らいだ。
「俺も…ずっと元貴のこと考えてた。嫌われたと思って、すげー落ち込んでた」
滉斗がそう言うと、元貴の目から、ほろりと涙がこぼれ落ちた。
「ご、ごめんなさい…恥ずかしくて、どうしたらいいか分からなくて…」
「俺の方こそ、ごめん。でも、元貴が嫌じゃなかったって言ってくれて、本当に…」
滉斗は繋いだ元貴の手を、そっと自分の頬に寄せた。元貴の指先から、滉斗の温かい肌の感触が伝わってくる。
「手帳…見た」
滉斗の言葉に、元貴の全身が凍りついた。慌てて手帳を確認すると、確かに日記のページが開いている。
「っ!あれはっ…!」
恥ずかしさで、元貴は顔を両手で覆いたくなった。全て知られてしまった。自分の、一番秘めていた気持ちまで。
しかし、滉斗はそんな元貴の様子に構わず、むしろ優しく、そして真っ直ぐな瞳で元貴を見つめた。
「俺、すごく嬉しかった。元貴が、俺のことそう思ってくれてたの…。俺も、元貴のこと…好き。」
滉斗は、言葉を選びながら、ゆっくりと口を開いた。
「俺も、元貴に会ってから、毎日がすごく楽しくなった。元貴のことが、もっと知りたい。もっと…一緒にいたいって思ってる」
滉斗の正直な言葉が、元貴の心に深く染み渡る。もう、何も隠す必要なんてない。自分の気持ちを、素直に伝える時だ。
「滉斗さん…僕も…」
元貴は、涙で潤んだ瞳で滉斗を見つめた。
「俺も、滉斗さんが、好きです…っ」
その言葉を聞いた瞬間、滉斗の顔に、今までで一番優しい、満面の笑みが浮かんだ。
滉斗は、人目なんてまるで気にする様子もなく、元貴の体を優しく引き寄せた。
「元貴…」
そのまま、滉斗は元貴をぎゅっと抱きしめた。
会社の最寄り駅前のロータリー。たくさんの人が行き交う中で、二人は互いの温もりを確かめるように、強く抱きしめ合った。元貴の顔が滉斗の胸に埋まり、滉斗の腕が元貴の背中に回される。
二人の間には、もう何の壁も、気まずさもなかった。ただ、互いを強く想い合う、温かい感情だけが満ちていた。
やっと、、、、、、、、、、、!!
コメント
8件
うっうっ…😭💓(?) 初々しすぎて可愛すぎるよ…😭 やっぱり尊いね。✨(?)
きゅんきゅんすぎる
2人が結ばれてこっちまで嬉しいよ泣 これから2人のピュアな恋人生活が見られるのか……!日常の楽しみが1つ増えたわ