2年の歳月によって俺の手は血まみれになっていた。洗っても洗っても落とせない血が手にこびりついてる。だけど、俺は目の前にいる”魔王”を殺すことを決意して腰におさめている刀を強く握り締める。
俺の2年前は中学3年生だった。中学を卒業したら高校に受験か就職のどちらかだ。だけどこれは25年前までの話だ。2050年の日本では入隊という進路がある。これは30年前に現れた”生物”達に対抗するための人材を派遣するためである。その”生物”達によって世界は混乱が起きている。日本も例外ではない。日本の領土の3分の2しか移動することが出来ない。
その時の俺は高校の受験のことしか考えておらず、挙句の果てにソーダ味のアイスを教室の隅で食っていた。
「あちぃー9月もそろそろ終わるぞー」
むしゃむしゃと頬張りながら前に座ってる氷河威吹という友人に話を持ち出す。
威吹は受験のために勉強をしながら俺の話に耳を傾けている。俺の方に椅子を動かして向かい合う。
「仕方ないよ。9月でも暑いものは暑いんだから。てか、そのアイス2つに割れるよね、龍也」
「割れるけど上げねぇよ。俺が200円出して買ったんだから」
「お前…それ200円で買ったの?学校の近くの駄菓子屋だと100円で売ってたぞ?」
「げっ!?コンビニが買うんじゃなかったぁー!あそこの駄菓子屋やってたのかよー!」
「おいおい…有名な小説家の赤城桃彦の息子がこんな天然バカなんて…」
俺は有名…とはあまり思わないが小説家の赤城桃彦の息子の赤城龍也として学校では知られている。で俺はそこまで頭も良くなくていい点数を取らないと父親の名前をすぐ出される。でも、俺はあまり気にしていない。父親本人が「俺とお前が違うのは当然だ。同じくらい頭の良い奴なんかいたら人生がつまらんからな。お前のペースで物事を進めろ」と言われたことがあった。簡単に言うと「右から左へ受け流しとけ」ってことと思って今も生活している。
威吹が父親の名前を出すのは俺の反応が見たいからであって本人は比べるつもりは無いんだと思う。3年ぐらいの付き合いだけどわかる。
「それより聞いたかー龍也」
「なにがー?」
「2年前に行方不明になってた隊員が見つかったんだって」
「あーどうなってたの?」
「頭部だけなかったらしい。指紋と隊員服に書かれた隊員番号、服に入ってた隊員証が合ってたんだってよ」
「頭だけないって趣味悪いな」
「人間と同じだよ。人間も度を超えればそういうこともやっちまう奴もいるからね」
「息吹ってたまに怖いこと言うよな」
「少しだけ発想が変なだけだよ」
アイスを半分までいった時に放送が入る。
『えー不審者情報。学校付近にて不審者の報告がありました…なお生徒は…』
「今日も出たんだね。今月で3回目だよ」
「まぁまぁな田舎なところに出るんだな」
『…え?不審者じゃない?え……避難指示?』
放送で先生が焦り始めた。ワイワイと話をしていた生徒達が段々と静かになる。
『生徒たちの避難誘導を優先…はい、はい…。全校生徒に連絡します。現在市の方から緊急避難指示が発令しました。廊下に並び校庭に集まってください。繰り返します…』
教室内がざわつき出す。担任教師が教室に入ってきて生徒に避難指示を促す。
「全員いるか?!急いで廊下に並べ!」
「先生!!陽菜がいません!」
女子生徒が1人、担任教師に投げかける。担任教師は汗を一段とかきはじめる。現在起こっていることは普段ありえないことで戸惑っているのだろう。
「今いる生徒だけでもいいから並べ!私が陽菜さんを探す!」
威吹と俺は椅子から立ち上がり廊下に出る。
ここで俺たちのするべきことは避難であって探すことではない。担任教師の迷惑にもなってしまうと考えていると威吹が口を開ける。
「なぁ龍也」
「なに、威吹」
「陽菜さん探しに行こう」
「何言ってんだよ。俺たちがするのは避難だろう…」
「俺たちなら探せるよ。陽菜さんが居そうなところわかるだろ?」
ひなさんはクラスの明るいキャピキャピした生徒とつるんでいるが昼休みにいるのは図書室ということが多い。本を読むことが好きだと以前言ってたいたから場所は断定できる。
「たぶん図書室だと思う。あの子パニックになってどこか隠れてる可能性があるし、なんなら図書室の方で点呼確認してるかもしれない」
「とりあえず一旦校庭に出ることにしよう」
5分後に校庭に出ることができ、多くの生徒と教師で校庭は埋め尽くされていた。
メガホンを持った教師が声を発する。
「今からー!地域ごとに別れます!このまま一時帰宅となります!それでは1年生から地域ごとに別れてください!」
1年生はある程度同じ地域の生徒と固まりはじめたがクラスの女子が担任教師に陽菜のことを聞く。
「先生!陽菜はいたんですか!?」
「まだ見つかっていない…だが大丈夫だ!すぐ見つかるからな」
担任教師は汗をかなりかいていた。他の教師も校内に入っていく。俺は校内に不審者(?)なるものがいるのではないかと感じていた。
「威吹…もしかして…」
「多分だけど校内にいるんだと思う」
「陽菜が?」
「陽菜さんもそうだけど不審者って言われてる奴…」
「どうする?探しいくか?」
「バレないように探しに行くぞ」
俺と威吹はこっそり校庭から離れ、外と繋がっている廊下に入っていく。今いるのは1階であり、図書室は2階。あと5m先の階段を上れば直ぐに図書室が見える。俺と威吹は音を殺しながら階段を上っていく。少し生臭い匂いが強くなっている。
「なぁ威吹…臭わない?」
「え?何が?」
「生臭いというか…なんだろう鉄の匂い?」
そう言いながら2階の床に足を踏み入れた時何が足に当たる感触がした。生暖かい何かだった。
足先を見る。白いスニーカーに血の赤色がついていた。俺は汗と嗚咽が同時に混み上がってきた。
「おい、龍也!?どうした?!?」
「血が…血が…」
「深呼吸するんだ!大丈夫だ!」
深呼吸をし、落ち着かせる。右側が図書室だ。ゆっくり右側を見る。図書室の入口には倒れている教師がいる。
「威吹…人が倒れてる…」
「おい、まじかよ…ゆっくり行くぞ…」
威吹を先頭に足音を立てずに図書室に近づく。血を流して倒れている教師を避けるように図書室に入る。本棚が多く、移動式のものと固定式のものにわかれていた。図書室の奥に人の影が2つ見えた。体を隠しながら影のある方を見る。
1人は探していた陽菜という生徒。そして、もう1人は服をビリビリに破れており、頭から角が生えた生物がいた。その生物は陽菜の首を掴んでいた。
「威吹…助けないと」
「俺は右から行くからお前は左から行け」
「わかった」
俺と威吹は二手に別れて行動する。威吹は近くの机に隠れる。俺は移動式の本棚の裏に隠れる。威吹は近くにあった本を手に取り、異型な生物の後ろ側の本棚に向かって、手に取った本を投げる。バサッという音が聞こえ、異型な生物は後ろを振り向く。集中が音が出たほうに向く。俺は分厚い本を取り出し、ゆっくりと異型な生物に近づく。その生物が陽菜の方に顔を向けた同時に俺は持っていた本をその生物に向けて叩きつける。その生物は後ろに仰け反る。
「威吹!!!」
「くらえよ!!!!!」
伊吹は近くの椅子をその生物に叩きつける。
椅子は折れ、その生物は尻もちをつき、陽菜から手を離す。俺は急いで陽菜の体を支える。
その生物は立ち上がり身体中の骨を鳴らす。
威吹は折れた椅子の破片を手に持つ。
「龍也…そこの窓空いてるか?」
「空いてるよ…」
「俺の合図と同時に窓から飛び降りるぞ」
「まじかよ…」
その生物は伸びた爪をこちらに向け、近づいてくる。
威吹は俺の持ってた分厚い本を奪い、その生物に投げる。その西部の頭に思いっきり当たる。
「龍也!行け!」
「っ!!!?」
俺は陽菜を抱えながら窓から飛び降りる。
窓の下は小さな木が生い茂っていた。それがクッション剤になり、そこに着地した。
「いっ!!陽菜大丈夫か?!」
「う、うん…」
陽菜は半泣きになりながら答える。校庭に避難していた生徒たちがざわつき始める。ざわつき始めた瞬間、頬から血を少し垂らした威吹が俺たちと同じように落ちてくる。
「威吹!?」
「あいつ硬すぎだろ…椅子の破片深く刺さらなかったぞ…」
その瞬間俺たちの目の前に体から少しだけ血を垂らした生物が窓から落ちてきた。
刺さったであろう傷がすぐに癒え、新しい皮膚となっていた。
「なんでなんで…なんでだぁー??!!」
その生物は雄叫びをあげながら俺たちに攻撃をしようとしてきた。俺は何も考えず、陽菜と威吹の前に出る。生物の爪は鋭く伸びており、このままだと俺の体はズタズタに引き裂かれるだろう。恐怖を感じながら、でも体は動くことを拒み、あと数cmまで爪が近づく。
後ろからなにかが飛んできた。飛んできたと思った時には俺に近づいていた腕は生物の体に何かで巻きついていた。
生物の後ろには青黒い戦闘服で身を包み、銃を持ったものが二人いた。
1人は青黒い髪をした男性、もう1人は金髪の女性。
「こちら、青葉海斗少尉。これより爪鬼の捕獲を開始します」
「海斗隊長ー、爪鬼はワイヤーでぐるぐる巻きにしたから早くボイドに連れてこーよー」
「おめぇらはァ、”狩人”かよぉ!?!!」
爪鬼と呼ばれた生物は声を荒らげながら、狩人と呼ばれた人達を睨みつける。
「俺はまだァ死にたくねぇよォ!!!」
「逃がさないよーん!」
金髪の女性は爪鬼が逃げようとした瞬間、爪鬼の足に向かって銃を撃つ。銃から出た弾は爪鬼の右足に当たり、ワイヤーのようなものを出しながら爪鬼を転ばせる。
「ハリー軍曹、手錠を爪鬼にかけてくれ。俺はあの子たちの様子を見る」
「了解でーす!」
海斗が俺たちの方に近づいてくる。銃を下ろし、姿勢を低くして俺たちの方を見る。
「大丈夫か?立てるか?」
「だ、大丈夫です…」
海斗が手を差し伸べ、俺たちはその手を握り立ち上がる。担任の教師が急いで走ってくる。
「お前たち無事か!?陽菜さんもいるのか…よかった…。でも、お前たちなんで校内に入ったんだ!?」
「だって、陽菜のことが心配で!」
「生徒は校庭で避難といったはずだぞ!」
「まぁまぁ、先生…落ち着いてください…。女の子の方を落ち着いた場所に連れてってあげてください」
海斗が担任の教師を落ち着かせ、保健室の先生がいる方に連れていかせる。俺たちの方を再度見て、口を開く。
「なんで、君たちは怒られたと思う?」
「言うことを無視下からですか?」
「それもあるだろうね。でもね、担任の先生は君たちが死んで欲しくないんだよ。他人って思ってしまうかもしれないけど教え子だから心配になるのは当然だよ」
「でも!もし図書室に行かなかったら…陽菜は殺されてた…」
「龍也…」
「俺たちがくるのが遅かった…これはあってはならない…。君たちの勇気はとても素晴らしい。ありがとう」
海斗はそう言って校内に入っていく。
「なぁ、威吹」
「なんだ?」
「お前って”狩人”に入るって言ってたよな?」
「ああ…家に金がないからね」
「俺、決めたわ…俺も狩人に入る。入って人を助ける」
世界では2020年に突如、鬼という生物が現れ世界中を混乱におとしいれた。日本では鬼が青森、岩手、秋田、宮城、山形を鬼たちが占領していた。鬼に対抗するため、世界各国では組織が作られる。日本ではその組織を”狩人”と呼ばれ、鬼と対抗している。
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