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突如、ヒノトの身体はバチバチと光り始める。
「髪が灰色に! アイツ……魔族の雷属性を吸収したのか……! あれが灰人の力か…………!」
「アハハハハ! 灰人の情報は聞いてるよ! でも、そんな状態からどう逃げ出…………」
ゾク…………
魔族がヒノトに目を向けると、ヒノトは目を大きく見開き、その目は充血し、ニコニコと笑っていた。
「な、なんだコイツ!! 気持ち悪い!! 痛みで頭でもイカれたのか!?」
その時、公式戦でのヒノトがキルの頭を過る。
「あの状態は…………まずいか…………いや…………」
そのまま、キルはヒノトに施していた回復魔法を解く。
「ちょっ、いいの!?」
「大丈夫だ!! むしろ今が好奇とも言える……! 僕たちは、全力でヒノトくんの支援に徹する!!」
「何!? ヒノトくん重症だし、まだ槍から抜け出せてすらいないんだよ!?」
そのまま、キルは自己バフで魔力を増幅させ、ヒノト目掛けて銃を向けた。
(ヒノトくん……君の戦い方は、本当にお粗末であまり好きじゃない。危険だし、余裕もないし、それでも、危機に瀕した時、それは莫大な力となる……!)
“水放銃魔法・霞”
キルの銃から霞が放出されると、魔族と共にヒノトは霞の中に隠された。
「なんだこの霞は…………! これ……味方にすらダメージを与え兼ねない範囲攻撃じゃないか……!!」
“陽飛剣・灰雷豪弾”
ゴォン!!
霞の中で、ヒノトは思い切り雷を放電させる。
ブォン!!
「ヒノトくん!!」
ヒノトは、キルの水魔法の中で自らも巻き込む雷魔法を放出し、強引に槍から放たれ、大きな音を立てて地面へと叩き付けられた。
“氷回復魔法・スノウドーム”
その瞬間、急いで回復魔法を詠唱しながら、ニア・スロートルが駆け付けてきた。
「ニア!! いいところに来た!!」
「出遅れました……! エルフの血で、様々なところから魔力は感じられていたんですけど、それが魔族のものなのかどうかは判別できなくて……無闇に動けなくなっていました……。戦闘の音がしたので、確実に魔族はいるけど、逆に、確実に味方がいると思いまして……。そしたら……ヒノトさんは……どうしてこんな……」
ニアは、自分の経緯をキルに説明しながら、ヒノトの酷い状態に顔を青褪めた。
ヒノトは、腹部に槍を刺され、口からも血を吐き出し、刺された腹部には雷を流され、内臓がいくつか破裂している状態で、意識は混濁し、理性は飛んでいるはずなのに、目を見開き、不穏な笑みを浮かべさせていた。
「コイツの状態は、公式戦の時と同じだ……。コイツの症状なのか……家系柄の血筋なのか……。大きな怪我をして理性が飛んだ時、コイツの脳はイカれるらしい。コイツは……死ぬまで暴れるぞ…………」
ヒノトの様子を眺めながら、三人はゴクリと目を合わせる。
「やるしかない……。今ここで、あの魔族を倒せなければヒノトくんはどちらにせよ……ってことね……」
「覚悟はいいな……。ヒノトくんのことは、僕たち全員がまだよく知らないことだ。でも、回復に特化したニアが来てくれたのはかなり大きい。算段はある……!」
ブワン…………!
「はーい! 作戦会議終了〜〜!! アハハハ! 私の雷を扱えるようになったって無駄! 私は雷属性の魔族、こうして雷のバリアも張れるんだ! 尚更、水の二人は私にダメージを与えられないし、雷を吸収したイカれ野郎なんざ、ダメージ無効になる!」
そう言うと、魔族は柴色のバリアを張った。
「手筈通り行くぞ……! ヒノトくんは、動ける身体にまで回復したら、恐らく突撃する……! そこを完璧に支援して、エルフ族から培ったことを活かす時だ……!」
「分かったわ…………!」
ボン!!
一定量の回復をしたヒノトは、キルの想像通り、未だ血の出る身体で魔族に飛び込んで行く。
「ニア!! 頼むぞ!!」
ニアは自分の胸をぐっと掴み、涙を堪える。
ニアもまた、精神破壊での自己バフを会得している為、氷魔力を大幅に増幅させた。
“氷支援魔法・リングスノウ”
そして、ヒノトと魔族、両者に氷を巡らせた。
「私に支援魔法……? アハハ! 本当にバカなんだな、キルロンドは!!」
ザッ!!
魔族の目の前に、飛び出したヒノトが現れる。
「これで終いだ!! 今度こそ殺してやる!!」
“雷魔法・雷葉”
(これ……私の魔法…………!? 魔法までコピーできんのか灰人は…………!!)
「でも、自分の魔法ならよく分かってるし、雷バリアの前では無力なんだよ!! イカれ野郎!!」
ゴッ!!
「何っ…………!」
突如、ヒノトは、攻撃するでもなく、魔族の眼前から消える。
ボン!!
“陽飛剣・魔力弾”
ゴッ!!
そして、背後から属性のない魔力の暴発をぶつける。
(私の雷葉は、雷のマークを付けた位置に高速移動し、雷攻撃をする近接技……! コイツ……私に雷バリアが張られてて無効化されることを理解して、私ではなく、私の背後にマークを付け、背後へ移動したのか……!)
ボン!! ボン!! ボン!! ボン!!
その後も、ヒノトは高速で魔族を殴り続ける。
「バリアの削りが早い……なんで…………!!」
その瞬間、キルとルルは同時に魔族を挟む。
「お前に氷を付与した理由……。それは、常に雷のバリアを張っている状態で氷付着を受ければ、お前は “超伝導” 状態になり、 “物理ダメージデバフ” を受けるからだ。ヒノトくんの様子は以前見たが、イカれてても、その状況の最善を実行していた……。だから、ヒノトくんが連続的に物理攻撃をすることに賭けたんだ……!!」
バリン!!
「クソがァ…………!!」
そして、魔族の雷のバリアは強引に破られる。
“水放銃魔法・水針”
“水攻撃魔法・アクアジェット”
ゴォッ!!
二人の水の攻撃が魔族へと襲い掛かる。
(しかし……この水の攻撃では、雷の魔族を倒すことはできない……。決めてくれ……ヒノトくん……!)
“陽飛剣・灰雷豪弾”
ゴォォン!!
二人から放たれる水攻撃と、ヒノトの自身のダメージを持つ厭わない雷の暴発により、小さな爆発を起こし、 “感電” を与えながら、魔族は膝を付いた。
「クソッ……! まだ倒れないか……! ニア……!」
焦るキル、しかし、
「セノ様が言っていただろう、甘く見るなと」
「氷の魔族……増援……だと……!?」
「クハッ……。お前も気をつけろ、特に灰人……頭がイカれてやがる……。魔族でも見たことがねぇ……」
(氷じゃ……尚更、僕とルルの水は微々たるもので、ニアの氷は無効化……。ヒノトくんの雷が唯一の弱点だが、あの状態からヒノトくんはもう…………)
キルの視界が歪んで行く中、煙が舞う。
シュッ!!
「痛っ……! なんだこれは……威力を全然感じない。雑魚が紛れ込んでるようだ」
増援の魔族の背に、突如矢が放たれる。
(弓兵なんて……誰も…………)
バチバチ!!
「うおっ…………!!」
ニタニタと笑みを浮かべ、とっくに気を失っているヒノトは、爆発から直ぐに態勢を立て直す。
「本当にイカれてやがるな……灰人!!」
「お前…………邪魔だ…………」
“狐架・鼬鼠”
ザッ!!
ヒノトは剣を暴発で放つと、魔族に反撃の隙を与える間も無く剣は魔族へと突き刺さる。
「ふっ、イカれてるのは本当らしいな! こんなボロい剣が刺さった如き、我は倒せない!!」
「早く放せ!! 奴は、私の…………!」
“雷魔法・雷葉”
バチィ!!
雷の魔族が言い切る前に、ヒノトは雷魔法を起動し、氷の魔族へと雷ダメージを与えた。
しかし、その一撃のみで、二人とも気絶、そのまま、ヒノトも役目を終えたかのように気絶した。
「何故……雷の一撃で二人が気絶を…………?」
勝ったはいいが、全くついて行けない展開に、キルもルルもニアも、全員が呆然と立ち尽くした。
「それは私の力よ、キルロンドの学生さんたち」
そこに立っていたのは、綺麗な長い緑髪に、背には弓矢を担いだ、耳の長いエルフ族が立っていた。