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 日和に抱きしめられると心が波がなく、静かで大きな海を見ているような、穏やかで優しい気持ちになる。なんだか懐かしささえ感じてしまうほど、心地よい。温かくて優しくて……甘い日和の匂いが息をするたび鼻に入ってくる。毎日こうして一緒に寝られたらいいのに。一緒に寝て、肌と肌を触れ合わせ、おやすみと眠る。それが叶ったらどんなに毎日幸せだろう……逆に日和を失ったら……高熱にうなされ日和が近くにいるのにも関わらず急激に寂しく、孤独感に襲われた。 ――日和だけは失いたくない。

 母親が突然いなくなったあの日のような大きな喪失感はもう二度と味わいたくない。



「日和、寝た?」

「ううん、起きてる」

「じゃあさ、このまま俺の顔見ないで聞いてくれ」



 高い熱のせいか、急な孤独感からか、口から弱音を吐こうとしている。



「うん……」



 小さな温かなぬくもりを再確認するように背中を擦った。大丈夫、日和はここに居る。



「俺、五歳のときに淫魔だった母親に捨てられたんだ。いきなりの出来事で理由も分からないし、父親も教えてくれなくて、そのまま死んじまったけどな。聞くと機嫌が悪くなるからいつの頃からか聞かなくなっちまった。写真なんて一枚もないんだぜ? 全部親父に捨てられちまってさ。今じゃ母親が……どんな顔だったかも曖昧で思い出せない。最低だろ……」



 高熱のせいか上手く頭が回らない。ただただ自分は話を聞いてほしいのか話しだした口は止まらない。今までずっと一人で溜め込んできたものを吐き出すように話し続け、日和は頷きもせずただ聞いているだけ、別に同情とか、反応が欲しかった訳じゃ無い。無言で聞いてくれる日和、それが心地良かった。



「五歳のとき、寂しくて母親とよく一緒に行った公園に行ったんだ。多分心のどこかでもしかしたら母親がいるかもって思ってたのかもしれないな。でもいたのは母親じゃなくて日和だった。あの日、日和と一緒に遊んだことが今でも昨日のように思い出せる。母親の顔は忘れていくくせに、五歳の日和の顔はしっかり覚えてる。目がクリクリでキラキラ輝いてた。あのときの俺には日和の目がすごい眩しかったな……」

「ごめん、全然覚えてない……」



 申し訳無さそうに細い声が洸夜の胸元から聞こえた。日和のハッキリとものを言うところも好きだ。



「でも日和は引っ越しちまって会うことはなかった。それでも会いたくて会いたくて夢の中に入っちまったんだけどさ……本当に日和に会えたから俺のなにもないつまらない世界が楽しくなったんだよ……な……会えて、良かった……ひより、どこにも、行かない、で……」



 少し話しすぎたか、洸夜はいつのまにか微睡んでいた。

一途な淫魔の執着愛〜俺はお前しか抱かない〜

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