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ユラ。古くからの言い伝え。
この街には、子供にしか見えない幽霊がいる。
私の家系は昔からずっとこの街の神社を継いでいる為こういう話には敏感だ。
高3の夏休み、東京にある大学を目ざして受験勉強に打ち込む日々。それでもレポート課題を出した担任に腹を立てていた。
「自分が興味のあることならなんでもいい。何かについてまとめてこい。」
こんなざっくりとした課題、この忙しい時期に普通出すだろうか。不満だけが募る中レポートにする話題を考えていた。
早くこのレポート課題を終わらせて受験勉強に取り掛かりたい私は、とりあえず図書館に行って話題を見つけることにした。
いつも学校帰りに寄るこの図書館。道のりには慣れている。いつも通りに踏切を渡り、しばらく代わり映えのない直線道路を進んだ先に押しボタン式の信号。目の前の光が青に変わり渡ろうとしたその時、誰かが私の肩を掴んだ。
「あの、咲良さんですよね?」
確かに私は咲良、旭 咲良。でもこの男の子は見たことがない。私と同じくらいの、黒髪で背の高い男の子。
「ごめんなさい、どちら様ですか?」
そう質問すると、隣から鈍い音がした。
私が渡ろうとした横断歩道を歩いていた女性に逆走車が追突したのだ。
「夏樹ユラ。また会おう。」
そう聞こえた。振り向いても、もう誰も居なかった。