テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
クリスマスイブの夜、外は思ったより寒かった。白い息を吐きながら、みことはマフラーを少し引き上げる。
🎼👑「……思ったより冷えるな」
🎼🍵「だから言ったじゃん、ちゃんと巻こって」
隣を歩くすちは、いつも通りの柔らかい声。
でも、さっきから距離が近い。
🎼👑「別に平気だし」
🎼🍵「みこちゃん、強がり」
そう言って、すちは立ち止まる。
そして、みことのマフラーに手を伸ばした。
🎼👑「ちょ、何——」
🎼🍵「動かないで」
優しい言い方なのに、不思議と逆らえない。
すちはゆっくり、丁寧にマフラーを巻き直す。
指先が、首元に触れそうで触れない。
それだけで、みことの背筋がぞわっとする。
🎼👑「……近い」
🎼🍵「寒いって言ったの、みこちゃんでしょ?」
言い返せなくて、みことは視線を逸らした。
すちは、それを見て小さく笑う。
🎼🍵「はい、完成」
🎼👑「……ありがと」
二人はまた歩き出す。
目的地は、少し高い丘の上にある小さな展望スペース。
街の灯りが、遠くで瞬いている。
🎼🍵「ここ、前に来たいって言ってたよね」
🎼👑「……よく覚えてんな」
🎼🍵「忘れないよ」
何でもないみたいに言われて、胸がきゅっとなる。
こういうところが、ずるい。
ベンチに座ると、冷たさが伝わってくる。
みことが身をすくめると、すちは少し間を詰めた。
🎼👑「……寄るなよ」
🎼🍵「体温、分けてあげる」
肩が触れる。
離れない。
🎼👑「……すちくんさ」
🎼🍵「なに?」
🎼👑「今日、やけに……」
言葉を探しているうちに、すちは空を見上げた。
🎼🍵「星、綺麗だね」
🎼👑「……話逸らすな」
そう言いつつ、みことも空を見る。
冬の星は、やけに近く感じた。
🎼🍵「クリスマスってさ」
🎼👑「うん?」
🎼🍵「誰かと一緒にいたくなる日だと思うんだ」
間を置いた言い方。
それが、逆に重く響く。
🎼👑「……それ、俺じゃなくてもいいだろ」
🎼🍵「俺は、みこちゃんがいい」
即答だった。
冗談みたいな口調なのに、目は真剣で。
🎼👑「……そういうの、急に言うな」
🎼🍵「言わないと、伝わらないでしょ?」
風が吹いて、みことの髪が揺れる。
すちは、それをそっと押さえた。
触れるのは、一瞬。
でも、確かに。
🎼🍵「触っていい?」
🎼👑「……聞くの、今?」
🎼🍵「大事だから」
少し考えて、みことは小さく頷いた。
すちはそれ以上触れない。
ただ、指先を近づけるだけ。
🎼👑「……なんで触らないんだよ」
🎼🍵「触れたら、戻れなくなりそう」
その言葉に、みことの喉が鳴る。
🎼👑「……臆病」
🎼🍵「うん。でも、慎重」
しばらく、二人は黙って星を見ていた。
肩は触れたまま。
やがて、すちが立ち上がる。
🎼🍵「戻ろっか。冷える」
🎼👑「……うん」
帰り道、さっきよりも距離が近い。
自然に、手が触れそうになる。
でも、どちらも掴まない。
部屋に戻ると、ツリーの灯りが迎えてくれた。
静かで、暖かい。
🎼🍵「ホットミルク、飲む?」
🎼👑「……飲む」
カップを受け取るとき、指が触れた。
今度は、すちが離さなかった。
🎼👑「……すちくん」
🎼🍵「大丈夫」
何が大丈夫なのか、分からない。
でも、その声は落ち着いていた。
ゆっくり、慎重に。
すちは、みことの額に唇を落とす。
🎼🍵「メリークリスマス」
🎼👑「……ずるい」
今度は、みことから少し近づく。
短く、静かなキス。
深くはない。
でも、確かだった。
🎼🍵「……今日は、これで」
🎼👑「……続きは?」
🎼🍵「また、星が綺麗な日に」
ツリーの灯りが瞬いて、
二人の影は、寄り添ったまま揺れていた。
触れない時間の分だけ、
心は、ちゃんと近づいていた。