プシュウ……
〈対馬駅、到着です〉
そのアナウンスが車内に響くと、
また車内の風景が変わり始めた。
ひんやりとしていた空気はふわりと暖かくなり、
カサゴ、アラ、アオナなど、
多様な魚が泳ぎ出した。
そしてドアが開く頃には、
ブリやマダイ、ヒラマサやアジ、
ついにはクロマグロも泳ぎ始めた。
〈それでは、いってらっしゃーい。〉
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
駅に入ると、
公園と植物園と神社を混ぜたような景色の、
広い室内庭園の世界が広がっていた。
人の流れは黒潮駅に比べるとゆったりとしていて、
なんだか、時の流れすらゆっくりに感じる。
rd「それに……なんか、懐かしい…?」
pn「?…どしたのらっだぁ。」
その声に少し驚きながら振り返ると、
そこにはぺいんとがいた。
rd「あれ、日常組のみんなはどうしたの?」
pn「クロノアさんとトラゾーは散歩に行って、」
pn「しにがみはぴくさんとどっか行ったよ。」
pn「…で、らっだぁこそ、運営のみんなは?」
rd「みどりはぐちつぼと、レウはコンちゃんと散歩。あ、きょーさんは一人でブラブラ。」
pn「ふーん…じゃ、二人で回ろうよ」
rd「えぇ…まぁ、いいよ。」
pn「ねーぇー!!w」
pn「なんでそんな嫌々なの!!!ww」
そんな事を言いながら談笑していると、
1人の少年が声をかけてきた
「先生!!」
pn「先生…?」
「あッ、刑事!!」
rd「刑事…?」
そんな不思議なことを言っている少年は、
小学生くらいの背丈と声で、
ぺいんととはまた違った色味の金髪と、
アクアマリンのような水色の瞳が特徴的だった。
「あ、ごめんなさい、人違いやったかもしれへん…」
pn「え、あ、うん、そっか!」
「ホンマにごめんなさい、迷惑かけてしまった…」
pn「う、ううん!!大丈夫!!大丈夫だよ!!」
ぺいんとはしょぼくれている少年を前に、
あたふたと慌てている
それを窘めるように、声をかける
rd「じゃあさ、この駅、案内してくれないかな?」
rd「俺ら、ここ初めて来るから土地勘ないんだよねぇ…」
そう言うと、少年はパッと顔を輝かせ、勢いよく話し始めた
「ええで!!僕、ここの住人なんで案内なら任せてください!!」
rd「お、じゃあお願いするね〜」
「任せてくださいよぉ、しっかり着いてきてな!!」
そう言って少年は上機嫌に歩き始めた。
pn「どこに連れてってくれるの?」
「こんなとこです!!俺のお気に入りの場所やねん!!」
そう言って俺達に1枚の写真を見せる。
その写真の中には、今いる少年の他にも、
友達と見られる少年達が写っていた。
そしてその背景には、
綺麗な砂浜と打ち寄せる波が美しい、
とても魅力的な海辺が延々と広がっていた。
「綺麗な場所やろ!」
「…綺麗な場所や。綺麗、や。」
pn「…?」
「あぁ!すんません、独り言ですわ!!」
そしてしばらく歩くと、ふと足を止めてしまった。
「……ごめん兄さん達、別の場所にしてええか?」
pn「い、いいけど…どうしたの?」
そして、ふと少年の目線の先へと目を向ける。
pn「ッ……!!」
rd「…。」
そこは、写真に写っていた綺麗な海辺……
が、あったであろう場所だった。
pn「…これは、、」
rd「…廃棄物、」
「ここは、季節風とかの影響で、海を漂うゴミが流れ着くんです。」
目に映る景色は写真の景色とは打って変わって、
廃棄物だらけの海辺に変わっていた。
ザァーッ、と波が押し寄せて来ても、
流れてくるのは廃棄物だけ。
__流木や海藻だったら、それは自然の摂理だからいいのだ。
…けど、流れてくるのはもっと違う物。
ラベルがところどころ剥がれた洗剤のボトル、
ボロボロに錆びたドラム缶、
泥と砂に塗れて真っ茶色の長靴。
__ネットニュースでよく見た景色だ。
…よく見てはいた。
けど、実感は湧かなかった。
この歳になって海になんか行かないし、
行ってもそんなに汚れていないから。
けど、それは表面上だけ。
俺らは海の中を見ていない。
__俺らは汚していたのだ、
綺麗で美しい、母なる海を。
「…ちょっと、待ってて下さい。」
そう言い残し、少年は海辺に駆け寄って行った。
そして、廃棄物をかき集め、
どこからか取り出したゴミ袋に入れ始めた。
rd「ぺいんと、」
rd「ッうん。」
ここでなにもしなくてどうする。
どうせなにも出来ないからって、
問題から目を逸らしてどうする。
子供が頑張っているのに、
大人がなにもしなくてどうする。
rd「ね、俺らも手伝うよ。」
「え、?」
pn「ここまで案内してくれたお礼!」
rd「あれ、それだとお礼のお礼にならない?w」
pn「うるせぇ!w」
そう言いながら、
俺らはゴミをかき集めた。
「__っふぅ、中々綺麗になったんとちゃいます?」
rd「まだ細かい物は残ってるけど、大まかな物は結構片付けられたねぇ〜」
pn「ぅ、運動不足にはキツイ……」
「ありがとうございました、マヨイビトの兄さん達!」
「これ、お礼のお礼のお礼です!!」
そう言って少年が差し出したのは、
ガラスで出来た馬の人形だった。
人形は2つあり、黄色と水色に色が分かれている。
「…これ、海に流れ着いたシーグラスを使って作ったんです!」
「もう、お別れなんですし…、」
「2つしかないんですけど…良ければ持って行ってください!!」
そう言って少年は、
少し寂しげな顔をしながら、
再度俺らに馬の人形を差し出す。
ぺいんとは2つ、馬の人形を受け取り、
黄色い馬の人形はもう一度少年に返した。
pn「もう1つの人形はさ、君が持っててよ!」
「え、どうしてですか?」
pn「…これで、俺らはきっと、繋がっていられるから。」
pn「いつでも、どこでも。」
そう言って、ぺいんとは、
にこっ!と満面の笑みを浮かべた。
そして大きく息を吸い、手を握りしめ、
思いっきり、海に叫んだ
pn「オンマイウェイッッ!!」
「ッ…!!」
「オンマイウェイ!!」
その声に呼応するように、
ぼわぁぁぁっ、と汽笛が響いた。
__プシュウ…
〈おかえりなさーい、対馬駅はどうでしたか?〉
sn「ぴくとさんと回れて最高でした…ッッ…!!」
pk「あはは、俺も楽しかったよ?」
rd「うわッ、コイツらいちゃついとるわ!!!」
gt「ブーブー!!!」
sn「なんで僕らこんな大バッシング食らってるんですか…」
pk「分からん…w」
〈はい、いちゃつくのもそこら辺にして下さ〜い?〉
sn「いちゃついてないですよ!?」
〈w…えー、次は、“リマン駅”です。〉
コメント
3件
なんか感動できる…普通に泣けるぜ…泣
対馬駅 金髪と水色の目の少年 捏島