食事の後、ゲームや出し物をして楽しんだ。最後は主役のマナが挨拶をしてバースデーパーティーは幕を閉じた。そして解散になった後も、俺とゆずきは残って後片付けの手伝いをしていた。
「明石さんとゆずきさん、少しお酒でも飲んでいって下さい」
ある程度片付けが終わると、荻野さんからお酒に誘われた。
「俺は別に構わないですけど――」
「私も大丈夫ですけど、お邪魔じゃないですか?」
「そんなことはありません。私もマナさんも騒がしいくらいな方が好きなんで。是非ゆっくりしていって下さい。布団も用意してありますので、良かったら泊まって行って下さい」
それから荻野さんとマナは買い出しに行ってくると言い残して、近所のスーパーに買い物に出掛けた。
プルルルル――プルルルル―――
「圭太、電話鳴ってるよ! マナからみたい」
「わかった」
テーブルに起きっぱなしにしていたスマホをゆずきが持ってきてくれた。
『マナ、どこまで買い物に行ってるんだ』
『――――』
『マナ、聞こえてるか?』
『――――』
受話口から鼻をすする音が聞こえてきた。
『マナ、何があった? 大丈夫か?』
『圭ちゃん、助けて――圭ちゃん――』
『マナ、どうしたんだ? 何があったんだ?』
『荻野さん――車に――はねられて――息してないよ――。心臓――動いて――ないよ』
『――――』
『わあぁぁぁぁぁ――――』
『――――』
マナが泣き叫んでいる声が電話口の向こうから聞こえてきているけど、何が起こっているのか何をしたらいいのか全く検討もつかなかった。
「圭太、どうしたの?」
「――――」
「圭太っ!」はっ!?
ゆずきの俺を呼ぶ大声で我に返った。
『マナ、今すぐに行くから待ってろ!』
俺は電話を切ると、ゆずきを連れて現場に向かった。頭が真っ白になり、どうしていいかわからなかった。ゆずきを見ると冷静さを保ってはいるけど、目には溢れんばかりの涙がたまり、今にも泣きだしそうな顔をしていた。そして現場に到着すると救急車とパトカーが数台ずつ停められおり、人だかりができていた。俺は人混みをき分けて奥へ奥へと進んで行った。
「あっ!?」
すると――担架に乗せられた荻野さんが救急隊員によって救急車に運ばれていた。直ぐ傍には――マナがワメキ声を上げながら地面に泣き崩れていた。
「マナ――」
「圭ちゃん――」
俺はマナに駆け寄り抱きしめた。
「大丈夫か?」
「荻野さんが、荻野さんが――わぁぁぁぁぁ――」
マナは俺の胸の中で火が着いたように泣き出した。しばらくは泣かせておいてあげた。かけてあげる言葉さえも見つからなかった。
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