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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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久しぶりに我が家の扉を開けた。

家は当然手入れをされていないので、家具や床は埃っぽく、壁を登る小さな蜘蛛が数匹いた。だが、外とは違ってここには腐敗臭はない、それだけで十分だ。

パーカーさんと共に、父が使っていた部屋がある二階へ向かう。

「ここが父の部屋です。一階より汚れていると思いますよ」

「問題ない、中へ入ろう」

父の部屋の扉を開け、中に入る。

そこには埃の溜まった大きな本棚、木製の作業机、クローゼット、ベッド…。父が使っていた家具がそのまま放置されていた。

パーカーさんと父の研究書を探す。探すと言っても、この部屋には研究書どころか本も紙も殆ど残っていなかった。

パーカーさんは一階を探してくると言い、階段を降りて行った。私は変わらず父の部屋で研究書を探す。 本棚はもちろん。ベッドの下、クローゼットの中、机の引き出し。

どこにも父の研究書はなかった。

父の部屋は諦め、一階へ行こうと階段を降りようとした時、パーカーさんに呼ばれた。

「ティファニ、ちょっと来てくれないか!」

彼の元へ向かう。

「どうしたんですか?」

「これを見てくれ」

彼がカーペットを捲ると、そこには扉があった。

「君、これが何か分かるかい?」

彼は扉を開ける。

「いえ、こんな物があるなんて初めて知りました。地下室…ですかね?」

「おそらくね」

地下へと続く階段。何年も住んでいた家に、まだ知らない場所があるなんて思いもしなかった。きっと両親が隠していたのだろう。それか両親も知らなかったか。

「行ってみようか。あ、怖かったら来なくていいからね」

彼は私を気遣って来なくていいと言ったのか、それとも挑発、言葉通り来なくてもいいという意味なのかもしれない。

「…行きます」

私は挑発と捉え下へと降りた。

地下室に到着する。そこには壁一面の本棚と、本棚に隙間なく詰められた大量の本があった。

「これは…全部カルトの物かい?」

「わかりません、この部屋に来るの初めてなので…」

彼は興味津々の顔つきで本棚に近づき本を手に取る。

「…素晴らしいね、おそらく全てカルトの物だよ。生物や植物の研究書が山ほどある。僕の求めていた本もあるかもしれない」

全て父の研究書。私は信じられず、本の詰まった部屋を見渡す。

私の知らない父の事を知れるかもしれない、小さな希望を信じて一冊の本を手に取る。その本には植物について記録されていた。

黄色でラッパのような形をしたフリージア、赤い実のなるアオキ、アルゴちゃんの好きな青く燃える青火草など、様々な植物が父の筆跡で残されていた。

「お、あった…」

しばらく本を読んでいると、パーカーさんが独り言のように呟いた。私は彼の元へ行く。

「それが探していた研究書ですか?」

「あぁ、この本は主に蝶について記録されていてね、その中に記録された血吸蝶について僕は知りたかったんだ」

血吸蝶については私も興味があったので、彼の持つ本を覗き込もうと顔を近づけようとした時、彼は急に本を閉じた。

「…読まないんですか?」

「読むよ、帰ってからね 」

私は血吸蝶のページを読めなくて少し不満だったが、気にしないことにした。

「僕はもう欲しい物を見つけたし、そろそろ帰りたいんだけど…君は何かあったかい?」

「いえ、特に何も…強いて言うなら、この植物の本を持って帰ろうかなと思っています」

「そう、じゃあ帰ろうか。そろそろ陽が沈む」

地下室の階段を上り、私達は帰宅準備を始めた。

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