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嘘はついてなかった。ただ、それに気づかせた人物のことを話していないだけで。
「そっ…か。あんたは…あたしと違って『普通』の仕事してるもんね。」
意外にも、落ち着いた声に安堵する。だけどその言い方は、納得した感じではなかった。
どこか引っ掛かりのある響き。
次に繋ぐ言葉が見つからなかった。
「結局あんたも…『普通』を選ぶんだ。あたしと一緒に闇に落ちてくれない。」
力なく、項垂れて小さく肩を震わせる姫菜。私の返答も待たずに続ける。
「美里亜と初めて会った時…同じ匂いがしたんだけど間違いだったみたいだね。」
ぽつり、ぽつりと塵のように降り積もっていく弱々しい言葉達。
「あんたもあたしを置いていくんでしょ。それであたしのこと馬鹿にする。男を漁ることしかできないビッチだって。」
「そんなことしな…」
「しようとしてんじゃん!!」
部屋中に姫菜の声が響き渡る。私は突然のことについ、たじろいでしまった。
はあ、はあ、と姫菜の荒い息遣いだけが沈黙を支配する。
眼球は鋭く、私を射止めて離さなかった。
あまりの恐怖に身動きできず、固まってしまう。手足は痺れ、動かせない。
何分たったのだろうか。いや、もしかしたら一瞬だったのかもしれない。
姫菜は、ふぅー、と深い息を吐き出す。
そして――
ガタンっ!!と、机を手のひらで叩いた。