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「……分かった。もう、関わんない。あんたとあたしは別々の道を行くから。これでさよなら。バイバイ。」
そーっと手のひらから顔を出したのは…お札が1枚と小銭。
それが、ここの部屋代だと一目で理解した。
「姫…」
「邪魔。」
私のことを脇目も振らず、背を向けて部屋を出ていく。
全てのものを拒否するオーラに囲まれた後ろ姿を、見送ることしかできなかった。
――パタン――
力なき閉められた扉を見つめる。周りには、姫菜が吸ったタバコの吸い殻と飲みかけのコップが2つ。
そして一人になった私。静寂しかなかった。
呆気にとられていた私も、徐々に状況が頭に入ってくる。
(そっ…か。私…姫菜に縁切られたんだ…別にいいけど。姫菜とは友達でも何でもない。ただ援交とかで情報交換とかするだけの関係だったし。寂しくなんかない。)
そう、本心でそう思っている。それなのに言い聞かせているような気分になるのは何故だろう。
そんなことはどうでもいい。とにかく動かなきゃ。
――ブー、ブー――
思考を巡らせていた時、ふいに携帯が振動する。
私は、力なくカバンから取りだし、視点の定まらない目で画面を確認する。
そこには、お店の番号が表示されていた。
こんな時に…と、正直取りたくなかった。しかし仕事のことかもしれないので、そういう訳にもいかず、仕方なく携帯を耳に当てる。
「お疲れ様ですっ!!藤塚でーす!!」
いつも通りの私を演じるのが、今はしんどい。