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今、音楽をやってる、この空間だけが楽しければいい。
みんなそう思ってるから、必要以上に深くは関わらない。
もしも、あたしのリスカみたいな闇深い現実にぶち当たったりしたら、楽しいだけの空間にぽっかりと穴があいてしまうことになるから。
そんなブラックホールみたいな穴に、かけがえのない世界を奪われたくはないから。
だからそこは、痛みも辛さもない、非現実的な夢のような場所でしかなくて。
それは、確かに居心地はよくもあったけれど。
でも、お互いの本当の姿を何も知らず、ひたすら音楽に打ち込むだけの仲間は、いつも仮面をつけて付き合ってるようで、お互いを偽った薄っぺらい関係のようにしか、あたしには思えなかった。
だから、バンドはやめてしまうことも多かった。
音楽で盛り上がって、だけど唯一共感できる音楽の話題も尽きてしまえば、他に盛り上がるネタもなくなって、やがて付き合いもあんまりなくなってくる。
ネタがなくなれば、相手にも興味がなくなる。
それ以上の深い付き合いなんて、誰も望んではいないんだから、方向性の違いとかなんとか言って、メンバーは1人減り2人減りして、やがて空中分解していく。
そもそも興味のなくなった人たちといつまでもいっしょに顔つき合わせて仲良くやれる程、あたしだって大人でもなかったし、仲間にいい顔をして自分をだまし続けるようなことなんか、できるはずもなかった。