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66 ◇ベッドルームで
一歩ベッドの置かれている部屋に足を踏み入れた瞬間、誰が決めたわけでも
ないけれど、蒼馬さんの足が右に向かわなかったので自然、私は足を右側に
向けて歩きだした。
右側のベッドを自分が使うのだと思って……。
右に1歩踏み出したかと思うや否や、蒼馬さんが私の手を取った。
そして、そのまま数歩、彼に引っ張られた方へと一緒に移動することになる。
これで今夜の成り行きが少し見えた。
最後までいかなくても、ラブラブモードには一応入るのだということが。
泊りの旅行まできて、最後までいかなくてもウンタラカンタラなんて思う
女は、私くらいだということはよぉ~く分かっている。
だって、しようがないじゃない。
過去に一度も私たちは最後までいったことがないんだもの。
蒼馬さんは2つ並んだベッドの真ん中の狭い空間まで、私の手を引いたまま進んでいく。
そして――彼が立ち止まった。
私はただ息をひそめ、目の前に見える(上が白、下部分がこげ茶からなる)壁を
見ているしかなかった。
蒼馬さんが左へ身をひねれば、すぐ左のベッドに潜り込み眠ることに
なるだろう。
そして、私のほうはというと、右側のベッドに潜り込みそのまま
眠ることになる。
そんなことを考えながらも、頭のどこかで――――だけど、その前に少し
ラブモードを楽しむ時間があるのだろうなぁ~と思った。
「まほりちゃん……」
蒼馬さんに呼ばれて私は顔を上げる。
胸の鼓動が聞こえてきた。
ドキンドキンいってる。
なんてったって、彼とホテル自体ほとんど利用したことがない。
思い出しても、仲良くなって3か月目くらいから休憩で3度ほどビジネスホテルを利用したきりだ。
少し休憩しようとビジネスホテルに誘われたことがあった。
その3回とも、密かに自分たちの関係が深まるのではないかと期待したこともあったけれど、
何故か蒼馬さんが最後まで要求することはなかった。
……ということで、ラブホも私は経験したことがなくて、それなのに婚活してまとまりそうだった
相手から蒼馬さんのことで不倫相手とみなされ、破談にされたお粗末な人間が──私なのだ。
いっそ何かあったのなら、諦めもつきやすかったというもの。
3度とも、清い関係で過ごし――――
そのあとも、キスと少しその先に進むだけできた。
だから、そのあとにそういう雰囲気になった場合は、公園とかそういう行為の
できそうな外だった。
そんな私は、キスだけは上手くなったのではないかな?