テラーノベル
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「主様〜!あーるじーさま〜!朝ですよ〜!」
『んん…だめよぉ…まだおねんねしたいわぁ…』
ムーちゃんのもふもふのしっぽを吸いながら、寝たフリをする。
もちもちの肉球でぽんぽんされるとまた眠くなる。
『あぁん…もう…わかったわよん…起きるわムーちゃん』
まだ眠いまぶたを擦りながら、ゆっくりと体を起こした。
…ムーちゃんには言えないけれど…。
昨晩、嫌な夢を見た。
〜「ぶつぶつ言ってねぇで働け!」
『はい…すみません…』
後ろで、こそこそ話す声が聞こえる
「あ、また藤野さん上司にこき使われてる」
「かわいそ〜」
「また残業押し付けて、飲みに行こ〜」
「いいね!何飲む〜?」
…聞こえてるように話しているのだろう。
『っ…あー!もう、うっさい!一回おだまり!』
言ってしまった。
オネエで。
「お前…そんな口調なのか…!男だろ!何そんな女みてぇな言葉で話すんだ!」
「えー…藤野さんちょっとかっこいいな〜って思ってたんですけど…萎えました〜」
「うわ、私も〜」
「よく生きれるね〜」
…やっぱりそうだ。
日本のような平和な国でも、口調とか見た目とかにごちゃごちゃ言ってくる。
だから、ここでは普通でいたのに…。〜
思い出したくない。
またあの残業生活とパワハラのオンパレードには戻りたくない。
「主様…?大丈夫ですか?」
ムーちゃんに心配されるなんて…アタシもまだまだね。
頼れるオネエさんじゃないと…。
そう思いながら、ムーちゃんのもふもふの頭を撫でる。
『ふふ、大丈夫よ心配させちゃってごめんなさいねムーちゃん』
しばらく撫でていると、こんこんとノックの音が聞こえた。
『はーい。いいわよ入っておいで』
そう言うと、ガチャと音が鳴り、ドアが開いた。
「失礼します主様。アレ出来ましたよ」
入って来たのはフルーレだった。
そうだ、天使狩りを終えた時フルーレが採寸をしてくれた。
そして、その時…服のデザインを詳細に教えたんだった。
『ありがと〜!フルーレ!早速着てくるわね!』
「あの、お着替えの手伝いをしてもよろしいでしょうか?」
一瞬フルーレってそんな性格だっけ…みたいな失礼なこと思ったけどよく考えればここは、異世界。
何かしら現代とは違うルールもあるだろう。
でも、これは流石に生理的に無理だから…。
『ふふ、フルーレったらアタシの体覗くつもり?』
あ、間違えた。
からかっちゃった。
まぁ、案の定目の前のフルーレはめちゃくちゃ照れていた。(言えないけれど可愛い)
『冗談よフルーレ。大丈夫アタシ一人で着替えられるわ』
そう言って、フルーレとムーちゃんを部屋から退出させた。
しばらく経って、外でフルーレとムーちゃんが待ってるドアを開けた。
アタシが頼んだデザインは、仕事着に似ているような服。
体に馴染むからね。
「よく似合ってますよ主様!」
アタシが着ているのは、白衣。
アタシの仕事は、難病を治す薬を作ること。
まぁ…仕事場超ブラックすぎてなかなかタイミングが見つからなかったけど。
『ふふ、ありがと』
やっぱり…白衣が落ち着く。
仕事は辛くても、この服は好きだから。
「それでは…食堂に行きましょうか」
そう言って、手を引いてくれた。
「おはようございます主様」
「おはようございます!主様!」
食堂にいたのはベリアンとロノだった。
『おはようベリアン、ロノ』
目の前にあった椅子に座った。
しばらくして置かれたのは、美味しそうな魚料理。
『あら…すごく美味しそうじゃない!』
見た目が高級ホテルそのもので、 食べるのにもったいない気がする。食べるけど。
スマホがあったら記録できるのに…と思いながら一口食べた。
『んん〜美味しいわ〜!ほっぺた落ちちゃう〜 』
味も高級ホテルそのもの。
高級ホテル行ったことないけど。
「へへっ、そうですかありがとうございます!」
初めて出会った時も思ったけど…。
やっぱり元気がいい子。
『こんな美味しいもの作れるなんて…ロノは頑張り屋さんなのね』
「そんな事ないですよ…でも…主様が言うならそうなんすかね?」
そんな会話をしていると、ふとベリアンの視線がこちらに向いていることに気づいた。
『あらぁ…ベリアン、アタシにヤキモチ妬いてるかしら?』
つい、口元が緩んでしまう。
「そ、そんな事っ…」
そう言ったって…目は正直。
深層心理は極めていて損は無い。
『ふふ、じょーだんよ冗談…アタシに何か話したいことがあるのでしょう?』
そうして…一旦安心させる。
癖が治るどころか…極めてしまった。
「あの…よろしければこの屋敷を探検してはいかがでしょうか?」
「探検…!面白そうです!主様!行きましょう!」
ムーちゃんが目をキラキラさせて、アタシに訴えかけてくる。
『分かったわ行きましょうか』
他の執事もいるっぽいからね。
「こちら、屋敷の執事達の名簿です」
そう言って渡されたのは、執事の名前と係の仕事。
気になる執事が一人居たけど…まず2階の執事から順に見てみたい。
そう思ったその時
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」
庭の方から絶叫が聞こえた。
『何かしら…もしかして天使!?』
「いえ、違うと思いますよ…庭に行ってみれば分かります」
アタシは、絶叫の正体を知るために庭に行くことにした。
ちょっと怖いけど…。
コメント
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薬剤師的な仕事してるのかぁ。そらブラックだわ