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ユキ/合唱コン疲れで3日程休み
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「あにき、おはよ」
カチャ、と鍵の開く音が部屋の中に響いた。
でも、もうその音で目が覚めることはなくなっていた。
目を開けても、目を閉じていても、どうせまったく同じ一日が始まる。
「…ん。」
ベッドの上で、俺の喉は小さく音を漏らした。
「ふふ、今日もいい子やね」
まろが嬉しそうに笑う。
手には朝食の乗ったトレーがあって、いつもと同じ食器の中にはいつもと同じメニューが盛り付けられている。
窓には鍵がかかっていて、ドアにも鍵がかかっている。
外に出る方法は、昔は何度も探したけど、もう覚えていない。
窓の鍵を壊そうとしたこともあった。
まろが眠っている隙に玄関まで走ったこともあった。
助けを求めて叫んだことだってある。
けれど、もう何年も前の話だ。
「あにき?」
「…なに」
「今日、ご機嫌斜め?」
「別に」
「そっかぁ。よかった」
何がよかったのかは分からない。
鬱陶しいくらいに笑顔なまろはベッドの端に腰掛けると、俺の頬を両手で包んだ。
その手は、とても冷たく鳥肌が立った。
「今日もかわええなぁ」
「…そう」
「好きやで」
「うん」
「大好き」
「うん」
「愛してる」
「…うん」
まろの笑顔が、ほんの少しだけ曇った。
好きだと言われれば、嫌な顔をした。
触られそうになったら手を振り払った。
愛していると言われれば、気持ち悪いと吐き捨てた。
その全部を含めて、まろは好きと言った。
「…あにき、俺のこと好き?」
俺はまろを見た。
いつものように目の前がぼやける。
「知らん」
「えー、そこは好きって言ってよ」
「…好き」
「ほんと?!」
「…そう言えばええんやろ」
存在自体がうるさいまろが、急に黙った。
そうすると、俺の頬を両手で包んでいたまろの爪が食い込んでくる。
「…そんなんちゃうもん」
子どものように拗ねた声。
「俺、あにきにちゃんと好きになってほしいんやけど」
「そう」
「俺だけ見てほしいし、俺のことだけ考えてほしいし、俺だけに笑ってほしい」
「…うん」
「なぁ、あにき」
まろは俺の額に自分の額をくっつけた。
「どこにも行かんといてな」
どこにも行かない。
そんなことは、言われなくても分かっていた。