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「…澪琉、さっき何て云ったのかもう一度云ってくれるかい。」
治兄は静かにそう私に問い掛けた。
此処はポートマフィアの最上階。
近くにはポートマフィアの【白い死神】敦君と、武装探偵社の社員である芥川が居た。
2人とも負傷しており、其の顔は困惑にも似た表情だった。
地面が見えない程高いビルの最上階で、私を含めた4人は距離を保ちながら佇む。
密かに吹く潮風に焦げ茶の髪を揺らしながら、私は笑顔で答えた。
「あれ、聞こえませんでした?だから云ってるでしょう。私が此の世界を救ってあげます…と。」
冗談を感じさせない瞳で治兄を見据え、淡々とそう告げた。
両手を広げて笑顔で云う私に、治兄はこれ以上無い程の冷徹な目を向ける。
「澪琉、冗談はその位にしてくれるかい。
さっき話した通り、此の世界は___」
「本の中の一部である、パラレルワールド…みたいなものなんですよね。」
治兄の言葉に重ねる様に私はそう云う。
静かな空間に、重い空気が漂った。
そんな中、私は其の空気を破る様に口を開いた。
「解ってますよ。首脳がやろうとしている事も、此の世界がどうなるのかも、今どういう状況で本来の世界がどうなっているのかも。
だって、私が此処に来たのは首脳を止める為なんですから。」
そう云って、私はにっこりと微笑む。
流石の治兄も私の発した言葉に目を見張った。
__治兄は本当に莫迦だよ。
私は心の中でそう呟き、治兄を見詰めた。
「首脳が云いたい事は解ってます。
“お前に何が解るのか?”って顔をしてますから。確かに、私には首脳程の頭脳は有りませんし、其れこそ考えてもみなかったです。」
声が震える。
治兄の目すらも見れない。
でも云わなきゃ、行動しなきゃ…治兄が死んでしまうんだ。
「…ですが考えてみて下さい、私は精神を操る異能力者です。其れは首脳でも例外では無い事を、首脳は知っておられますよね?」
私は有無を云わさぬ口調で続けた。
3人は何も云わず、私の話に耳を傾けていた。
私の云い回しが結構周りくどかった為か、敦君と芥川は頭に ? を浮かべている。
だが治兄は相変わらず、明晰な頭脳で理解した様だった。
「ふぅん、確かに澪琉の異能力が私にも干渉出来るというのは聞いたよ。
大方君の異能力を使って、私の記憶でも見たのだろう?其して現状を知った。」
治兄は何時もの顔に戻り、其の儘私を真っ直ぐ見詰めた。
身震いする程の視線に思わず私は冷や汗をかく。
「では、問題だ澪琉。記憶が見れたとして、君に出来る事が有るとでも思うのかい?
さっき云ったけど、此の事実を知る人物はこの2人だけで充分だ。其れ以上の人間が知っていては、世界が崩壊してしまう。
だから___」
そう云いかけて、治兄は口を噤んだ。
まるで苦渋の決断を下す様な顔で、其の儘俯いて黙る。
“此の結末になるのは不本意だ”
そう私に伝えている様だ。
私は其れを見て、ふと溜息をつく。
「そんな事云いましても、首脳が死んだ処で意味は成しませんよ。
何故なら、既に私が知っていますから。」
そう云うと同時に、私は治兄の元へ寄っていった。
震える拳を握り締め、其れを悟られ無い様に堂々とした表情を作る。
さあ、ここからが本番だ。
治兄を死なせない為にも、絶対に失敗は出来ない。
私…頑張るからね、治兄。
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ここまで読んでくれて有り難う!
今回はちょっと長めだったかな?
それでも楽しんで呉れたら嬉しいです!
良かったら、いいねとコメント宜しくね!!