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「…首脳が此のどうでも良い世界を守りたい理由は、織田作さんの為なのでしょう?」
冷たい風が私と治兄の間を吹き抜ける。
言葉を聞いた治兄はバッと顔を上げ、私を見詰めた。
其の顔は今まで見た事も無い程、感情に染まっていた。
ずっと光の無かった茶色の瞳は、今にも泣きそうな位に揺らいでいる。
_____…本当は、心残りが有る癖に。
私は心の中でそう愚痴る。
治兄は、本当は織田作さんと一緒に生きたいのでしょう?
本来の世界で親友でも在り、心の友で在った織田作さんと。
だから此の世界を守りたいんでしょう。
彼が小説を書ける此の場所を。
開いていた口を噤む。
今口を開けば、全部漏れ出ちゃう気がして。
治兄の頭の中には……きっと、織田作さんの事しか入っていないのでしょう?
心にぽっかりと穴が出来た様な感覚に、私の表情も心做しか歪む。
冷めた風が私を慰める様に頬を撫で、治兄の外套を揺らした。
コツコツと音を立てて、私は治兄との距離を詰めていく。
其して治兄の目の前に立った私は、その場にしゃがみ込み治兄の手を取って口を開いた。
「…もう良いよ、治兄。強がらなくて良い。
私が、治兄と織田作さんが一緒に居れる此の世界を守ってあげるから。」
治兄、と云う言葉に治兄は反応した。
気が付けば首脳と幹部、と云う関係になってから、私が治兄をこんな風に呼ぶ事は無くなった。
治兄が其れを望んでいなかったから。
だからか、治兄も目を丸くさせていた。
其して信じられない、と云った表情で口を開く。
「でも…どうやってするんだい。私はずっと考えてきたのだよ、此の世界を守る方法を。」
治兄は静かに拳を握り締める。
何かを堪える様に、だけど弱々しく云った。
「結果、導き出せたのが、此の答えなのだよ。
これ以上に良い案が有るとでも云うのかい…?」
治兄の声は、震えていた。
何時もの冷静沈着な態度は、もう何処かに捨てた様だ。
きっと、先程までの覚悟が揺らいだのだろう。
自分の思っている事を、其の儘表現したかの様な顔で、問い掛ける治兄を私は見据えた。
そして云った。
「ううん、治兄は死なない。私が殺させないよ、治兄も織田作さんも。」
私はそこ迄云って、息を吸った。
云わなきゃ。
此処で、私は”アレ”を云わなくてはならない。
この瞬間以外に、もうチャンスは来ないだろう。
云うんだ。
震える身体を沈め、私は真っ直ぐに治兄を見た。
其して笑顔で告げる。
「私が___治兄の代わりに死ぬから。」
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ここまで見てくれてありがとう!
投稿頻度がすっごく亀さんペースで御免なさい!
こんな主さんの作品だけど、楽しんでくれると嬉しいです!
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