ルシファーの異能「道路交通法」によって作り出された異空間では、すべてがルールに従って動いていた。信号機の点滅、標識の配置、亡者たちの無限行進…。タクトはその中で身動きを封じられつつあった。
「ルールに逆らう者には、罰が下る。それが私の異能の真骨頂だ。」
ルシファーは悠然と語りながら、次の罠を仕掛ける。
タクトの目の前にまた新たな標識が現れる。
「Uターン禁止」
「徐行」
「通行止め」
「これは…嫌がらせか?」
タクトは歯を食いしばりながら目の前の制約を見つめる。しかし、彼の動きが制限されるたびに、ルシファーは攻撃の手を緩めなかった。
黒い槍が空を裂き、次々とタクトを追い詰める。警告の異能でそれを防ぎつつも、タクトの体力は確実に削られていく。
「どうした? ルールに従えば簡単だろう?」
ルシファーの声が嘲笑混じりに響く。
「さて、次はもっと厄介なものを加えてやろう。」
ルシファーが手を振ると、空間全体が再び変化した。今度は道路の中央に巨大な横断歩道が現れる。
「横断歩道を渡る際は右手を挙げること」
「はあ?!」
タクトは思わず叫んだが、ルシファーはお構いなしに続けた。
「守らないと…どうなるか、見せてやろう。」
タクトが横断歩道に足を踏み入れた瞬間、巨大な闇の車が彼に突進してくる。
「くっ…!」
ギリギリで飛び退いたタクトは苛立ちを隠せなかった。
「くだらねえルールばっかり作りやがって!」
タクトが叫ぶと、ルシファーは楽しそうに笑った。
「くだらないかどうかは関係ない。重要なのは、貴様が従うかどうかだ。」
タクトはルシファーの異能に徐々に適応し始めた。標識や信号に従いながら、少しずつ攻撃の隙をうかがう。
「ふん、隙を見つけたつもりか?だが、追加ルールだ。」
ルシファーが指を鳴らすと、新たな標識が現れた。
「通行料1000ポイント」
「ポイント…?」
戸惑うタクトの周囲に、突然数字が浮かび上がる。
「貴様の動きにはコストがかかるんだ。ポイントがゼロになれば即死。貯めたければ、ルールに忠実でいろ。」
タクトは唖然とした。ルールを守らねば動けず、守れば守るほどルシファーの掌で踊らされる。絶対的な支配空間の中、タクトはある決断を下す。
「だったら…俺は!」
タクトの異能「警告」が輝きを増し始める。
「警告:すべてのルールを無効化する。」
その瞬間、ルシファーの空間に歪みが生じた。標識が一つずつ消えていき、信号機の光が薄れていく。
「ほう、面白い試みだ。」
ルシファーは少し驚いた様子を見せたが、すぐに笑みを浮かべた。
「だが、私のルールはそんなことで消えるものではない。」
再び標識が復活し、空間は元の形を取り戻す。タクトの警告は徐々に弱まり、再び追い詰められる形となった。
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