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「こっちおいでよ」
チタニーはティニの手をひいて、私の隣に座り直した。まるで、子供が母親に遊ぼうとねだるみたいな子供の甘えだった。
「本気で言ってるの?」
ティニは真面目な顔つきでチタニーを見つめた。
「私はチタニーに本当はこんな話をしたくなかった。でも、気持ちを言わずに後悔はしたくなかったの」
「うん」
チタニーは真っ直ぐ彼女を見つめていた。
「こんな酷い言い方でもっと私を嫌いになったでしょう」
彼女は何も言わなかった。
「ええ、いいのそれで。好きなものと一緒にいなさい。後悔しないのなら」
ティニは彼女の手が離れるのを待っているようだった。けれど、チタニーはその手を離さずに言った。
「嫌いも何もないよ。ここでティニールを離さないよ。寂しそうなティニール。後悔にさせないよ」
ティニの名前を繰り返す彼女の声は、聖女のような優しいものだった。幼い聖女が心の毒素を抜いていく。
ティニは諦めたように、 チタニーを私と挟んで座った。そのうちに、チタニーから可愛い鼻歌が聞こえてきた。ティニは困り眉をしながら言った。
「理由なんて全然ないじゃない。寂しそうってなによ。単に私が好きなだけじゃないこれは」
目を伏せてため息をつく。でも、チタニーの可愛い鼻声には流石に彼女も参ったようで。
「今は聞いてあげるわ。私もチタニーが嫌いな訳じゃないんだし」
私は、あまりのツンデレに笑ってしまった。
「リエン、あなたちょっとおかしいわよ」
私は言った。
「お互い単に好きなだけだね。一緒に座りたかったみたいだ」
ティニと私は、彼女には聞こえないような囁き声で話した。
「子供のいうことなんて、全く理解できないわ。いきなりなものだし」
「でも、この突拍子のなさに救われる大人は多いんじゃないかな」
「私が考えている心配事がまるで伝わらないものね。言葉を、気を、使っている暇がないくらい」
「頭がいいのはどっちなんだろうね」
私は笑った。
「リエンもそんなことは言えないわよ」
ティニは同類だと言いたいようだが、私は決してそんな事はなかった。
「私はもうチタニーに驚かされてばかりだから。今更、比べるなんて選択肢すら起こらないよ」
私たちは家族のようにその場を楽しんでいた。子供という存在が不思議なのか。それともチタニーが特別なのか。私には分からないけれど、なんだかいつも心が洗われるような気になるのはどうしてだろうか。
「そういえば、チタニーはあの時どうして泣いたのかな?」
私はチタニーに尋ねた。
ドルリアンと話した時の彼女の泣き顔が、未だ脳裏に焼き付いていた。
涙は心を洗った証とも呼ばれるが、まさかそういう意味で泣いたようには見えなかった。