夜。ベッドの中、薄暗い明かりだけが残る部屋。
ふたりは向かい合って、枕と枕が触れ合うくらい近くで横になっていた。
「祐希さん……、今日もありがと」
「何が?」
「全部やで。話聞いてくれたり、甘えさせてくれたり」
「いつものことだろ?」
「ふふ、せやけどな。そういう日って好きって言いたなんねん」
「そっか」
「好き。好き……。なあ……、聞いてる?」
「聞いてるよ。好きだって」
「でもな、もう1回言う。好き。好き好き。あと……、好き」
「お前、回数で勝とうとしてる?」
「ちゃうもん。今日の好きがいっちゃん好きやからな」
「……は?」
「毎日更新してんねん。祐希さんへの好き記録」
「じゃあ俺も負けてられないな」
「ほな、明日もいっぱい甘やかしてな?」
「もちろん」
ふと沈黙が訪れ、どちらからともなく視線が合う。
藍は布団の中で、そっと祐希のパーカーの裾をつまんだ。
「……なあ、祐希さん」
「ん?」
「こうやって、眠る前に話すの好きやわ」
「俺も。お前の声……安心する」
「ほんなら……今日の好き記録、もう一個追加やな」
藍の笑顔に、祐希は口元を緩め、そっと髪を撫でた。その手の温もりに包まれながら、藍はゆっくり目を閉じる。
眠る直前の好きはいちばん本気でいちばん甘くて、そして明日の恋も今日よりもっと深くなる魔法だった。