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ローレン・イロアス
叶
葛葉
※ ご本人様には関係ありません。
ー あったのだ、そんな奇跡は ー
久々に人とこうやって楽しく会話をした気がする。
最近は、する事もなくやる気も起きず、家で暇をもて余していた。
つまらないなと、欠伸をかましてから、今日は何をしよう。と頭を抱える。
いつもみたいに寝て過ごし時間を無駄にしてしまおうか、と煙草でも吸いながら気儘に考える。
『 ふぅ 、暇だな 。 』
煙草の煙が口から溢れる。そういえば今日はクリスマスだったか。
体内時計や日にち感覚も狂ってきて、突然気づきたくないことに気づいてしまう。
実際クリスマスは俺には関係ない….けどこの機会だ、久々に外に出てみようと思い、思い腰をよいしょ、とあげ、ダサい部屋着から外出着のお洒落な服に着替え、ボサボサの髪を結わき、香水をふり、準備万端で家を後にした。
いざ町に出たのは良いが…クリスマス間近となれば勿論、街中はカップルで溢れかえる。
失敗したな…、確実に勇気を出すタイミングをミスってしまった。
クリスマスに男ひとりで町に出るものじゃないと、場違い感をハンパなく感じて、遂に耐えきれなくなってしまった。
今日はもう帰ってまた後日頑張ろう、と思い踵を返し先ほど来た道をまた戻る。
クリスマスといえば、恋人は手を繋ぎ、仕事終わりの人は大抵暖かい家族が待っている。
俺には暖かい家族は居ないし、
クリスマスを一緒に過ごす恋人すら居ない。
だから俺には程遠い事。そんな幸せ溢れた人たちが、行き交うなか俺だけがひとり寂しく流れに逆らっている。
気を落ち着かせようと、ふぅ、と軽い溜め息をつくつもりが、少し寂しいさと窮屈さが混じったような溜め息が出た。
そんな事を考えていると、より気分が下がってくる。
もう考えるのはやめよう、余計寂しくなってくる…と一人心の片隅で、唱えていた。
その時冷たい感触が頬に触れるその濡れた後を辿り、上を向くとふわりふわり、と白い羽のようなものが落ちてくる。雪だ___。
下を向いてばかりで気づもしなかったが、街灯は少なくイルミネーションと月明かりが綺麗に写し出されていた。
心ばかりか気持ちが楽になった気がする。流されやすいだろうか…だが今はこれでも良いとさえ思ってしまうほど久しぶりに雪をみることが出来た事が何よりも俺の心を楽にしてくれた。
成人男性が1人雪を横目に何をしてるんだと、言いたげな高校生カップルの視線が俺の心に深く刺さる。
そのせいでさっきまで気にならなかった筈の周りの視線を感じて恥ずかしくなる。
気を取りなおし、周りの視線を気にしながら小走りで、再度自宅へと足を向ける。
しばらくして、さっきとは違うイルミネーションすらない人通りの少ない路地に出た。
幸福感に包まれていた先ほどの空気とは違い、静寂で落ち着いたこの空気が俺に纏わりつく緊張感と圧迫感を解いてくれた。
おかげで、暗い気持ちはどこかに消え去り、俺はひとり軽快なスキップを踏む。
その時、二人の男性とすれ違った。俺は瞬時に二人の方向へ振り返る。
どこかでみたことがある気がする。
どこだろう、コンビニの店員だろうか?それとも、Uber Eatsの配達員か?
『 だれだっけ … ?? 』
いや違う、きっとモデルかアイドルだろう。
みたことはあるのにいくら脳内検索しても、思い出せない。
でもどうしてか…自分でも分からないまま、体が勝手に俺はまた振り返り、2人が通った道を辿ってしまった。
二人の後を追って、10分ほど経っただろう。
俺はまるで不倫現場を捉えようとする探偵のように二人の後をつけた。するとあるお店の前で脚を止めた、俺は焦り物陰に隠れる2人が店内に移動したのを確認してからのそのそと、店の前に立つ。
鍋屋?…クリスマスに男ひとりで鍋屋というのは少し気が引けた、俺のなかでは居酒屋などは他人を巻き込みお酒を嗜むものだという印象がとても強かった。
もし俺が、エデンに居なければ、容易く入ることは出来ただろう。
そして居酒屋の知らん顔のおじさんとも笑顔で会話をすることは出来ただろうに。
でも、今まで人との関わりを閉ざしてきたから人との接触方や距離感すら測ることすら、今の俺にはそれが難しかった。
『 仕方ない行くか…。 』
よし!と両頬をひっぱたき店の扉を開けて、のれんをくぐる。
『 ッ!! 』
戸を開けた瞬間、ぶわッ、と強い光が顔に当たり目を閉ざす。やべっと、思い、すぐに目を開けると、そこは暖かい雰囲気に包まれていた。その暖かさに浸っているとすぐに陽気な店員の声に声を掛けられた。
『 いらっしゃいませ 、1名ですか ? 』
『 あ 、 はい 。』
『 1名様ご来店でーす 』
店員が店中に聞こえるほど透き通った多きな声で他の店員に伝え、俺の方へ振り返りってから微笑み、席へ案内してくれた。
『 げっ 』
だが、案内してくれたのは、カウンター席だった。俺はバレないよう不満そうな顔する。だってカウンター席は出来れば避けたかった。でも1人で来ていたからテーブルを1人で使う訳には行かない。だから勿論カウンター席だった。
雪も降って寒かった事もありお店のなかはお客さんが溢れる返っていたため俺の我儘で席を変えてもらうことも出来ない。
この場から逃げたくてもお店に脚を踏み入れてしまったから逃げることも出来ずに俺はひとりカウンター席で肩身を縮めて、硬直していた。
『 こちらメニューです。 』
『 ありがとうございます 』
随分使い古されたのだろう。表紙と黄ばんでいるメニューが間の前に置かれた。
メニューを捲ると食欲をそそる様な物ばかり。お肉だって豚肉から鹿肉まで、野菜もあまり聞かないようなものだってある。プラスしてデザートもあった。
俺はあ食欲には自信があった為お一人様メニューをスルーして、俺は二人用のメニューを頼むことにした。
正直楽しみで、歩いてばかりだったし久々の運動…ただ歩いていただけだけどお腹も空いてきたから俺は届くのがとても待ち遠しかった。
すると、突然近くでグループ飲みをしていたおじさんに話しかけられた。
酒臭く、頬を赤らめていた。きっと酔っぱらっているんだろう、最悪だ変なのに絡まれた。変なことをして怒られてもいやだと思い、俺はおじさんに笑顔で、返事をする。
『 はい。 』
『 お兄ちゃん、今1人かい? 』
『 あー、そっすね…一応 』
『 奢るからさ、一緒に呑まない? 』
『 すみません。でも迷惑っすよ 』
『 いや大丈夫。話してくれるだけでいいからさ 』
『 なるほど 』
『 ジジイだけの話しじゃ楽しくなくてね 』
断る理由も思いつかず、仕方なく誘われた机につくと、既にお酒が注がれていた。
そこまでお出迎えされてると普段お酒呑まないんです。等と今さら言えるはずがなくて、ありがとうございます。とだけ伝え、ビールが入ったジョッキを受けとった。
折角用意してくれいた訳だし、奢りとなれば呑まないと言う選択肢は端から俺に与えられておらず、キンキンに冷えたビールを、バレないように少しだけ口に含む。
こういう時はなんの話をすればいいんだろうか。
ただ愛想笑いをして話しに頷いているだけが今の俺の仕事だろうか?それしかすることがないのなら家にいた方が有意義な時間を過ごせるだろう。…そんな様子を察してくれた、おじさんが俺に話題を振ってきた。緊張のせいなのか、お酒のせいなのか分からないけど鼓動が早く感じた。焦ったようにおじさんの話題に俺は頑張って答えようとした。
『 あ、そういえば僕って何歳なの? 』
『 僕?!…22歳っすよ~w 』
『 22歳なの?もっと20歳とか思ってたよ 』
『 そ~んなガキに見えるっすか? 』
『 おじさんからしたらまだまだ子供だよ 』
確かに40~50歳の大人からすると22歳とはまだたまだ子供だろうし、恐らく息子や娘などとさ程年齢はかわんないのだろうが、少し心外だと感じる部分もある。
『 名前も知らないな~ 』
『 あ、俺ローレンっす 』
『 ローレンくん仕事なにしてるの 』
『 なんっっもしてないっすよ! 』
『 最近までエデンって所で警備部隊に所属してたんすけどやめてニートなうっすw 』
この話をするとトラウマが蘇ってくる。でもそんな暮らしも今思うと楽しかったのかもしれない今はただ1人で退屈な日々を過ごしているだけだから昔のように仲間と一緒に過ごす日々が懐かしいと思う。
『 警備部隊ってなに? 』
その質問に少しだけ言葉が詰まる。言いたくない訳じゃない、今までの任務の事とかたくさん話したい事がある。
『 もしかして、話したくなかった? 』
『 いや、思い返して何あったかなって 』
『 俺エデンって所にいたって言ったとおもんすけどエデンはマジで犯罪者が多くて、ガンダムみたいなも乗り物に乗って闘ったり、本部とか馬鹿急がしいんすよ 』
『 ガンダムって大袈裟過ぎだよぉw 』
『 いやガチガチ!殺人犯とかも追いかけたりするんだって! 』
『 へぇ、警察ってこと? 』
『 いやそれは違うっすね、警備部隊なんで 』
『 警察と警備部隊の何が違うの? 』
『 え、わかんないっすね 』
外に出て良かったかも知れない。こうして他人と暖かく話したのは久々で今のこの時間が幸せだ。知らない景色にも出会うことが出来て、雪もイルミネーションもみれた。良い日だ。
おじさんとお酒を飲み始めて2時間が経った。そろそろ帰ろうと、お礼をした後朝よりも弾んだ気持ちで店を後にする。
『 来て良かった…。 』
その時鞄につけた、ChroNoiRのキーホルダーが揺れた。
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※誤字脱字ご了承ください。
※ご本人様には関係ありません。