テラーノベル
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一次審査の「奇跡の合格」から一週間。星野ひまりは、シャイニングプロモーションの巨大なダンススタジオにいた。鏡張りの壁、まばゆい照明。集められた2次審査の通過者は、1次審査を勝ち抜いただけあって、誰もが洗練されたオーラを放っている。
「これより、2次審査の説明を行います
」マイクを持ったスタッフの声が響く。
「今回の課題は『グループパフォーマンス』です。5人1組のチームに分かれ、3日後に課題曲のダンスを披露してもらいます。チームワーク、そしてその中での個人の輝きを審査します」
スタジオに緊張が走る。スタッフが機械的に名前を読み上げ、ひまりは「チームC」に割り振られた。
「よろしくね、星野さん」
声をかけてきたのは、圧倒的な美貌を持つ少女だった。艶やかな黒髪をポニーテールに結び、完璧なプロポーションをタイトなレッスン着で包んでいる。彼女こそ、今回のオーディションで
「合格間違いなし」と噂されている天才、白金美月だった。
「あ、よろしくお願いします、白金さん」「美月でいいよ。同じチームになったんだから、仲良くしようね」
美月は天使のような微笑みを浮かべ、ひまりの手を握った。その温かさに、ひまりは少しホッとした。(よかった……。怖い人じゃなさそう)チームCのメンバーは、美月、ひまり、そして美月の実力を信奉する取り巻きの少女2人(沙耶、莉奈)、そして大人しい性格の絵里の5人だった。さっそく、渡された課題曲のビデオを見ながら練習が始まる。しかし、ひまりはすぐに現実の壁にぶつかった。
「ワン、ツー、スリー、フォー……。あ、ごめんなさい!」
ダンス未経験のひまりは、ステップが全く追いつかない。周りのメンバーと動きがズレてしまい、何度も全体の流れを止めてしまう。
「はぁ……」
取り巻きの沙耶が、わざとらしい大きなため息をついた。
「ねえ、ちょっと。星野さんが遅れるせいで、全然先に進めないんだけど? 1次審査でプロデューサーに気に入られたからって、ちょっと調子に乗ってない?」
「すみません! すぐに覚えますから……っ」ひまりは頭を下げた。その時、美月が沙耶をなだめるように間に入った。
「まぁまぁ、沙耶、そんなに怒らなくても。ひまりちゃんは未経験なんだから、できなくて当然だよ」
美月はひまりを振り返り、優しく微笑んだ。
「ねえ、ひまりちゃん。このままだと、チーム全体の点数が下がっちゃうでしょ? だから、ちょっとフォーメーションを変えない?」
「フォーメーション、ですか?」「うん。ひまりちゃんは、ずっとこの『一番後ろの端っこ』にいて」
美月が指差したのは、正面の鏡からも、審査員席からも死角になるような、ステージの最果てのポジションだった。
「そこなら、多少ステップがズレても全体の邪魔にならないし、ひまりちゃんもプレッシャーがなくて楽でしょ? 私がセンターでしっかり引っ張るから、安心して」「え……でも、それじゃあ私は、ほとんど見えなく……」
「文句あるの?」
美月の声のトーンが、一瞬で変わった。さっきまでの優しい笑顔のまま、瞳だけが氷のように冷たく、ひまりを射抜いていた。「足を引っ張る未経験者をチームに入れてあげてるの。これでも譲歩してるんだよ? 嫌なら、今すぐこのオーディション、辞めたら?」
背筋にゾッと冷たいものが走った。美月の取り巻きの沙耶と莉奈が、クスクスと鼻で笑っている。もう一人の絵里は、関わりたくないというように目をそらした。(この人は……助けてくれようとしてるんじゃない。私を排除しようとしてるんだ)美月の裏の顔に気づいた時、ひまりの心に、1次審査の時に感じたあの「泥臭い執念」が再び首をもたげた。ここで折れたら、学校にいた頃の、いいように使われるモブの自分に逆戻りだ。
「……わかりました。そのポジションでやります」
ひまりは美月の目をまっすぐ見返して、静かに答えた。
「物分かりがよくて助かるわ」
美月は満足そうに微笑むと、すぐに背を向けた。
「じゃあ、練習再開ね」
と華やかに声を張り上げる美月の背中を見つめながら、ひまりは拳を強く握りしめた。
(見ていて。端っこだからって、消えてあげるつもりはないから)
練習時間が終わり、他のメンバーが帰った後も、ひまりは一人でスタジオに残り続けた。誰も見ない、一番端っこのポジション。そこでひまりは、美月の完璧なダンスを思い出しながら、何度も、何度も、夜遅くまでステップを踏み続けた。
コメント
1件
あー、美月、めっちゃいいキャラしてるな……! 最初は優しいお姉さんかと思いきや、あの「文句あるの?」のトーン変わりでゾッとしたわ。一瞬で“裏の顔”をチラ見せする描き方、めちゃくちゃ巧い。ひまりが端っこに追いやられてるのに、夜遅くまで一人で練習する“泥臭さ”がまた熱い。ここで折れない根性、好きだわ🔥 次、どうやってあのポジションから輝くのか、楽しみすぎる!