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恐ろしいくらいの快感から逃れようと、キスの合間に逃げ場を求めるが、その瞬間に後頭部に手を当て固定され。
また口内を犯す熱に思考を奪われて。
「あ……、んっ……」
繰り返されるうちに、漏れ出る吐息も熱くなるばかりだ。
「そんな可愛いお前をさ、もう離せないんだろうな、俺は」
「ん……、え?」
息を乱されている真衣香に対して、坪井は平然として見えた。快感に溺れていきそうになる中で、その様子にチクリと少しだけ胸が痛む。
「もしお前が心変わりしても、別の男のとこに行きたいって言ってもさせないんだと思うよ」
真衣香の唇の端からだらしなく流れる唾液を舐めとりながら、掠れた声が何かを噛み締めるように言葉を繋ぎ続ける。
「お前の優しい気持ちをさ、泣きついてでも脅してでも騙してでも……離してやらない男だと思うよ、俺は」
「……あっ」
突然の甘い刺激に真衣香は恥ずかしくなるような声を上げて、坪井のシャツを強く掴んだ。
肌を這うように彷徨っていた手のひらが、下着を浮かせ、隠れる膨らみを包み込むようにして触れたから。
「俺みたいな男、やめときなって言ってやれなくてごめんな」
その言葉が合図だったかのように、胸のあたりにあった手が背中にまわされ、もう片方の手は膝裏あたりに添えられて。
軽々真衣香を持ち上げた坪井は、ソファのすぐ先にあったベッドに運び、軋む音も聞こえないほどに優しく降ろしてくれた。
そして、両腕を顔の横につけて、真衣香に跨り見下ろしながら甘くも、どこか低く、恐ろしさを含んだ声で囁く。
「かわいそうに、って思うんだよ。もう逃げらんないじゃんって」
鋭く細められた瞳のその奥が、真衣香を押さえつけるように妖しく光る。身動きひとつ取れないままに、ただ坪井を見上げるしかできなかった。
「でも、ごめん、俺今からお前を抱くから」
「あ……」
「好きだって言ってくれた言葉がさ、本当なんだって実感したい」
「つ、坪井くん……」
絞り出した声で名前を呼ぶと、その声をまるで飲み込むかのように、激しく唇を押し付けられる。
角度をかえ繰り返される深いキスの合間に低く這うような声で。
「抱いて、何度も抱いて。気失って……次、起きたらさ。俺のことしか考えられなくなってればいいのにって思って抱く、ごめんな」
囁き続ける。
「でも、好きだよ」
愛の言葉を、今は素直に受け止められる。
「お前のことがほんと、好き……真衣香」
「……っ!」
「真衣香」
(ま、真衣香って……名前、いま)
初めて名前を呼ばれ、嬉しくてだろうか。驚いてだろうか。溢れた涙。
それを坪井の舌が愛おしそうに掬った。
声が途切れて、互いの呼吸だけが部屋に響く。
続く行為が、今日は不思議と怖くなかった。早く欲しくて、もっと触れたくて。
坪井の背中に腕を回し、しがみつくと。
ゆっくりとタイツを脱がせてくれていた優しい手が……大きく乱れた呼吸とともに荒々しく動き、スカートと一緒に剥ぎ取られた。
何かを堪えるように、眉をしかめ、息を大きく吸って吐いて。
「好きな女に下からしがみつかれるって、こんなヤバいんだ……知らなかった」
欲情にまみれた声が耳を刺激する。
この人に、まだ知らない夜の過ごし方を教えてほしい。
真衣香は心の底から、願った。