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鷹槻れん

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鷹槻れん

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#恋愛
水無月 京
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#オフィスラブ
草原草原

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「申し訳ありません! お客様、お怪我はありませんでしたか?」
偶然近くにいた女性客にぶつかったかもしれないと、吉井店長が丁重に頭を下げながら声をかける。
「なんなんですか?! すごくビックリした! もうちょっとで身体に当たるところだったじゃない」
驚いたとばかりに左胸を手で押さえながら吉井店長に向かって苦情を言っている女性の顔を見た瞬間、私は衝撃を受けて息が止まりそうになった。
彼女の顔を見るのは三年以上ぶりだ。会話を交わしたのはあの電話が最後だった。
当時ショートボブだった髪が、今はセミロングの長さに変わっているものの、目の前にいるのは百合菜で間違いない。
「最近アミュゾンが人気だって聞いたから来てみたのに、なんて店なのよ!」
あとから駆けつけたアルバイトの男の子が、すぐさま倒れたマネキンを起こして少し離れた場所へ引っ込めた。
彼が申し訳なさそうな顔で「僕がきちんと設置しなかったからですよね。すみません」と私に小声で謝ってきたので「大丈夫」と言葉を返す。
これは彼だけの責任ではない。確認を怠ったのは私だし、そもそも展示台の上に乗せようと提案したのも私だ。
「こちらの不手際でお客様を驚かせてご不快な思いをさせてしまいました。心よりお詫びいたします」
よりによって百合菜とこんな形で再会するなんて、と思いながら様子をうかがっていると、この場になぜか神谷社長が現れた。
平日の昼間なので幸い店内は混みあっておらず、マネキンが倒れたそばには百合菜しかいなかったようだが、いきなり現れて頭を下げる社長を目にした彼女は、少し怒りの感情が収まったように見えた。
「あなた誰ですか?」
「ジニアールのCEOを務めている神谷といいます」
「ここの社長さんなんだ……」
百合菜はこちらに気付いていなかったようだが、彼女へ向けて視線を送り続けていた私に目を止めた。
「百合菜……」
「え……冴実? なんでここに?」
「私、ジニアールの社員なの」
百合菜も私と同じように、こんな偶然があるのかとひどく驚いた顔をしていた。
彼女には二度と会いたくなかったのに、と思わず心の中で思ってしまう。
街でばったり再会したのなら仕方ないけれど、自社店舗でのクレームがらみというこの状況が最悪だ。
「本当に申し訳ありません」
今は仕事中だから、当然私は会社の人間として百合菜に向かって深く頭を下げた。
相手が誰であろうとマネキンが倒れたことについてはこちらが悪いので、きちんと謝罪しなければいけない。
「冴実が私に謝るなんて、さぞかし屈辱だろうね」
くすりと笑ったその顔に、あのとき電話越しに聞いた声が重なる。
チラリと百合菜の表情をうかがい見ると、勝ち誇ったように薄っすらと笑みを浮かべていた。すぐに人を見下すところは以前と変わっていない。
最後に話をしたあの電話のときも、彼女はこんな顔で笑っていたのではないかと考えたら、途端に悔しさが込み上げてきて胸が締め付けられた。
「この度のお詫びといたしまして割引券をご用意いたします。店長、ご案内して」
社長はしばらく私たちの会話に耳を傾けていたが、吉井店長に指示を出して百合菜をレジのほうへ誘導しようとした。
「その前に。神谷さんは独身ですか?」
「え……はい」
「へぇ、そうなんだ」
なぜそんな関係ないことを尋ねるのかと、この場にいる百合菜以外の誰しもが疑問に思っただろう。
それに加えて、私はひどく胸騒ぎがした。彼女が恋愛対象として神谷社長に興味を示している気がしてならない。
「名刺を頂戴できますか?」
百合菜の言葉を聞いて、吉井店長が「今回のことでなにかあれば、まずこの店にご一報ください」と横から口を出していたが、彼女はそれには見向きもしない。
すぐさま社長はスーツの内ポケットから名刺を一枚取り出して百合菜に差し出していた。欲しい物が手に入った彼女は途端にうれしそうな笑みを浮かべる。
私はなにも言えずに口を真横に引き結んでいたら、吉井店長が「こちらへどうぞ」と百合菜を店の奥へ案内してくれた。
コメント
1件
ああ、この展開、胸が締め付けられました……冴実さんがまさか百合菜とあんな形で再会するなんて。倒れたマネキンの一件で頭を下げるしかなかった状況、屈辱的すぎますよね。それに社長への名刺要求も不気味で、次が気になって仕方ないです。