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#イラスト
ずんだもちぃ
1,070
ゆ
24
ある朝、目を覚ました其の瞬間。隣へと視線を遣れば、其処には当たり前のように君がいる。そんな日々を送ってみたい。……なんて、随分と気障な願いを此処に書き記しておこうと思う。
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きっと、君の瞳に俺は映っていない。そんなこと、とうの昔に理解していた。それでも尚、どうしようもなく願ってしまったのだ。ほんの一瞬でいい。君の其の双眸に、俺という存在を映してはくれないだろうか、と。僅かでも此方に心を傾けてくれたなら。そんな淡い期待は、いつしか行き場を失い、跡形もなく消え去ってしまった。後に残されたのは、苦く、痛ましい記憶ばかり。思い出すたび、胸の奥底に沈めた筈の感情が、静かに息を吹き返す。
何故、俺は君を好いてしまったのだろう。
何故、数ある人間の中から、君にばかり身も心も奪われてしまったのだろう。
幾度となく自らに問い掛けたところで、答えなど見つかりはしなかった。___否。きっと、本当はとうに答えなど出ていたのだ。ただ、それを認めてしまえば、もう二度と知らぬ振りなど出来なくなる気がして。だから俺は、知らない振りを続けていたのかもしれない。幼かった俺には、自分の感情ひとつさえも理解することが難しかった。ましてや、其の想いが誰かを遠ざけることも、繋ぎ止めることもあるのだと、知る由もなかった。どうすれば、傍にいてくれるのだろう。どうすれば、此の手から君が零れ落ちずにいてくれるのだろう。幼い頭で幾度も考え、俺なりに足掻いてみた。
君を夢中にさせるには。俺なしではこの人生において物足りないと思わせるには。
__だけれど、そんな術など知る筈もなかった。誰かの心を繋ぎ止める方法など、何処にも書かれてはいなかったのだから。結局、幼く未熟は俺に出来ることと言えば、少しでも多く言葉を交わそうとすることだけだった。話し掛けて、笑い合って、ほんの僅かな時間でも貴方の記憶に残ろうとした。
其れがどれほど無意味であり、有意味なことであったか、当時の俺には知る由もなかった。
俺より幾許か年上の君。愛らしい顔立ちに、艶やかな長い髪。陽に灼けた肌さえも、君を形作る美しさのひとつだった。何もかもが俺とは違っていて、其の姿は、幼く未熟な俺の目にはひどく眩しく美しく愛らしく映っていた。
そうして俺はいつも、君を目で追っていた。
何気ない仕草も、ふとした表情も、何ひとつ見逃したくなかった。そうして目に焼き付けたところで、君が此方を振り返ることなどなかったのだが。
時は過ぎる。日々は移ろう。俺の知らないところで君の世界は広がり、俺だけが其の場に取り残されていく。どうしたって届かない人。月並みな言葉を借りるなら、きっと、手の届かない月のような存在なのだろう。けれど、ふと思う。手に入らないからこそ、美しく見えるのだろうか。___否。きっと違う。たとえ此の俺の手に触れることが叶ったとしても、君は変わらず美しく、素敵な人だったのだと思う。遠くにいるから好いていたのではない。手が届かないから好きになったのでもない。ただ、君だったから。其れだけのことだったのだろう。
そんな叶いもしない未来を思い描いていると、不意に、言いようのない罪悪感が胸を満たした。誰に咎められたわけでもない。何かをしてしまったわけでもない。それなのに、独りでに俯いてしまう。そんな罪悪感から逃れようとそっと瞼を下ろせば、其の裏側に貴方の面影が浮かんだ気がした。__きっと、俺が君を想いすぎているだけなのだろう。
君は知らない。
俺がどれほど君を想っているのかも、どれほど些細なことで一喜一憂していたのかも。俺の胸の内に、こんなにも重たく、行き場のない感情が巣食っていることなど、知る筈もない。何よりも、幼く未熟な俺自身すらも知らなかったのだから。此の感情に名前があることにさえ、つい最近まで理解していなかった。どうして今まで気付かなかったのだろう。何度もそう思い返しても、過ぎ去った時間が戻ることはない。だけれど、もしもずっと昔に気付いていたとして。もしも此の感情を認め、素直に伝えられていたとして。果たして俺は、君に手を伸ばせただろうか。きっと、答えは否だ。早く気付いていたとしても、今になって気付いたとしても。遅かれ早かれ俺はきっと、同じように立ち止まり、同じように言葉を呑み込み、何ひとつ伝えられないままでいたのだろう。そうして今日も、届かないと知りながら、君を想っている。叶わないと知りながら、叶う筈のない未来を夢に見る。___自覚している。まったく、救いようのない話だ。
それでも、君を好きになったことだけは、どうしたって否定できそうになかった。
この文が、ちょこぺろに読まれないことだけを祈って眠りに着こうと思う。
コメント
4件
うわぁ好きだ 三万いいねってえぐいな
うわあ、すごく切なくて美しい独白でした……。 「君の瞳に俺は映っていない」っていう冒頭から最後まで、届かないと知りながら君を想い続ける心の葛藤がひたひたと伝わってきて、胸がぎゅっとなりました。特に「手が届かないから好きになったのではない、ただ君だったから」って気づく場面、ここでこの物語の答えが出たような気がして、読みながら息を呑みました。 幼い頃に必死で言葉を交わそうとした記憶とか、幼い自分には感情の名前すらわからなかったっていう後悔とか、一つひとつの描写が本当にリアルで——語り手のその“どうしようもなさ”に、こちらまで切なくなってしまいました。 最後の「ちょこぺろに読まれないことを祈って」でふっと現実に引き戻される感じも憎いです。続き、すごく気になります。