テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「実里……」
「もう、自分のこと考えてよ。自分の幸せを考えてよ」
きっと実里くんは対等にみんなと同じ位置に立っていたかったんだ。
自分に向けられる想いが同情だったらと思うと、本当の意味で自分のことを好きでいてもらえないんじゃないかって怖かったのかもしれない。
私も、そうだったから。
自分家の事情を話せば、奈々子や伊代も気を遣ってしまって今の関係が変わってしまったらどうしようって思っていたから怖くってなかなか話せなかった。
対等にいたい。同情なんてされたくないって実里くんと同じように思っていた。
「ていうか……本当馬鹿だし、うざいし、むかつく! 願いのことだって許してないから」
「うん、わかってる」
「……っ許さない」
「うん」
潤は悲しげに微笑んで頷いた。まるで実里くんからの拒絶を受け入れようとしているみたいに。
そんな潤に「でも」と実里くんが言葉を繋ぐ。
「今まで守ってくれて、俺の為に料理も覚えてくれて…………ありがとう。潤にい」
実里くんが潤に笑いかけたのを初めて見た。
その笑顔は照れくさそうで、けれど穏やかで潤とよく似ていた。
「今日はオムライス、作ってよね」
その言葉を聞いた瞬間、潤の頬にぽろりと一筋の涙が伝った。
目を見開き、心底驚いている様子で潤は言葉がでないみたいだ。
まるでストッパーが外れたかのように、涙は止めどなく彼の瞳から落ちていく。
けれど、潤は涙を拭うことなく真っすぐに実里くんのことを見つめている。
「何泣いてんの。かっこわる」
そう言いながらも、実里くんの瞳は潤んでいて溢れそうなほど涙が溜まっている。
「オムライス……作る、よ。とっておきなやつ」
「……半熟じゃないと嫌だからね」
潤が嬉しそうに微笑む。それに答えるように少し恥ずかしそうに視線を外しながら、実里くんが微笑んだ。
ああ、やっと……やっとお互いの想いが伝わったんだ。
長い年月をかけて、ようやくこの兄弟は心を通わせることができたんだね。本当によかった。
二人の距離はまだどこかぎこちないけれど、これからゆっくり縮まっていけばいいなと心から願った。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
48