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『今日は、ちゃんと言おう』
そう心に決めて、学校へ向かった。
でも、気持ちはどんどん揺れていく。
学校で出水先輩を見かけるたび、胸がぎゅっと苦しくなった。
(言いたいのに、言えない)
声に出すタイミングを探すけど、いつも何かが邪魔をする。
「ナマエ、どうした?」
彼の優しい声に、思わず顔を上げる。
「なんでもない、ただの風邪かも」
そう言って笑うけど、内心はぐちゃぐちゃだった。
放課後、ふたりで廊下を歩きながらも、言葉はすれ違う。
『……出水先輩』
呼びかけてはみたものの、次の言葉が出ない。
もどかしさに、つい急ぎ足になる。
(言いたいことがあるのに、うまく言えない)
そんな自分に苛立って、涙がこぼれそうになる。
それでも、心の中で何度も繰り返す。
(いつか、ちゃんと言うから)
その想いだけを胸に抱えて、今日も彼とすれ違った。