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コメント
1件
いやあ、今回も重くて、でもすごく好きな回でした…!公太の「仲間を助けたい」一心の暴走、痛いほどわかるだけに、原田のビンタと牧田の過去話がめちゃくちゃ刺さりました。「耐えることも強さ」って台詞、設定好きとしては軍隊ものの鉄板だけど、それでも毎回響くんですよね。公太のなかで何かが変わり始めた予感、続きが気になります。
#憑依
成瀬りん
633
#家族
たつ
53
#日常
ももは
551
アスガルトでの訓練も終盤に差し掛かっていた。
この日行われていたのは、実戦形式の模擬戦。
囮、支援、攻撃――それぞれが役割を担い、連携しながら戦況を動かしていく訓練だった。
公太は攻撃役として配置されていた。
戦闘開始から数分後。
前線で囮役を務める隊員たちが、徐々に押され始める。
「チッ……想定より敵の動きが速い!」
隊員の焦った声が響く。
一人、また一人と追い込まれていく仲間たち。
その光景を見た瞬間、公太の胸がざわついた。
(やべぇ……このままじゃ……)
仲間たちがやられる。
その思いが頭を支配した。
「……くそっ! こんなの見てられっか!」
公太は持ち場から飛び出そうとする。
すると隊員の一人が叫んだ。
「待て武藤! 今動いたら連携が崩れる!」
「うるせぇ! あいつら全滅しちまうだろ!」
公太は制止を振り切り、敵陣へ向かって突撃した。
仕方なく仲間たちも後を追う。
しかし――
それこそが敵の狙いだった。
次の瞬間。
敵チームが一斉に反撃へ転じる。
陣形は崩壊。
戦場は混乱。
味方同士の連携も消え失せた。
模擬戦は一瞬で乱戦へと変わる。
「――やめろッ!!」
怒号が訓練場に響いた。
訓練は強制終了。
静まり返る空間の中、教官・原田がゆっくり歩み寄る。
そして――
バチンッ!!
鋭い音が響いた。
公太の頬に強烈な平手打ちが叩き込まれる。
「バカヤロウ!!」
原田の声は怒鳴り声ではない。
それ以上に重い怒気を帯びていた。
「貴様の勝手な行動で部隊全体が危険に晒された!」
公太は睨み返す。
「仲間を助けようとしただけだろ!」
「それで全員死んだら意味があるのか!」
原田は一歩踏み込む。
「仲間を守りたいなら、まず仲間を信じろ!」
「……っ!」
「作戦を守ることも戦う者の責任だ!」
公太は拳を震わせた。
悔しい。
納得できない。
だが怒りは収まらない。
「このヤロウ……!」
飛びかかろうとした瞬間、
周囲の隊員たちが慌てて押さえ込む。
「落ち着け武藤!」
「今のお前はただのガキだ!」
「離せよッ!!」
暴れ続ける公太。
そのまま訓練場から連れ出されていった。
残された原田は小さく息を吐く。
「……甘すぎるな、あいつは」
その言葉には、
怒りだけではない感情が混じっていた。
だが公太は、それを知る由もなかった。
数時間後。
薄暗い待機室。
公太は椅子に座ったまま俯いていた。
そこへ静かな足音が近づく。
扉が開いた。
現れたのは牧田だった。
「……喧嘩したんだってな」
公太は顔を上げない。
「別に間違ったことはしてねぇよ」
牧田は黙って壁に寄りかかった。
「俺が十九の頃さ」
ぽつりと語り始める。
「君によく似た奴がいた」
公太が顔を上げた。
「……俺に?」
「あぁ。短気で、喧嘩っ早くて、誰より仲間思いだった」
牧田の表情が少しだけ曇る。
「ある戦闘の日だった」
「仲間が崖から落ちそうになったんだ」
「誰も助けられないと思ってた」
「でも、そいつだけは走った」
公太は息を呑む。
「助けたのか?」
牧田は静かに頷く。
「助けたよ」
「腕を掴んで引き上げた」
「だけど――」
そこで言葉が止まる。
部屋に重い沈黙が落ちた。
「雪崩が起きた」
「そいつは巻き込まれて崖下へ落ちた」
「戦いが終わって駆けつけた時には……もう遅かった」
公太は何も言えなかった。
「なんで、その話を俺にするんだ」
牧田は窓の外を見る。
夜の訓練場では、今も隊員たちが汗を流していた。
「命令が全てじゃない」
「だがな――」
牧田は静かに続ける。
「耐えることも強さなんだ」
公太の脳裏に仲間たちの顔が浮かぶ。
唯我。
一祟。
畑中。
そして母。
もし今日、自分の暴走で誰かが巻き込まれていたら――。
そんな考えが胸を締め付けた。
「……俺、間違ってたのか?」
牧田は微かに笑う。
「それを決めるのは君自身だ」
公太はゆっくり顔を上げた。
心の中にあった怒りは消えていない。
だがその奥で、
何かが少しずつ変わり始めていた。
「……ありがとよ」
牧田は何も答えず、
静かに部屋を後にする。
扉が閉まる音だけが響いた。
残された公太は一人、
拳を見つめる。
強さとは何なのか。
守るとは何なのか。
その答えを探すように――。
静かな夜は更けていった。