テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
輝道が厳重な警備を破り、刑務所を脱走したのは、自首からちょうど1週間後のことだった。彼の目的はただ一つ。10年目の因縁に決着をつけ、兄・勇一にこれ以上の危険が及ばないよう、すべての元凶である朝原卓をこの世から完全に消し去ること。卓が入院しているはずの、警察の監視下にある隠れ家。輝道は闇に紛れて窓から侵入し、無音の足取りでベッドへと近づいた。懐から、再び手に入れた銃を抜き払う。しかし、月明かりが照らし出したベッドの卓は、薬で深く眠り込んでいた。そのベッドの傍ら。パイプ椅子に腰掛け、怯えたように身を縮めている一人の女性がいた。現在の彼女の名は、森田佳奈子。エプロン姿のまま、夫の看病をしていただけの、どこにでもいる普通の主婦。さらにその横には、佳奈子を慰めるように付き添っていた、勇一の部下である刑事・小山萌子の姿もあった。萌子は佳奈子の昔からの友人であり、今回は警察としての警護を兼ねて、個人的に看病を手伝いに来ていたのだ。不審者の侵入に気づいた佳奈子と萌子は、恐怖でガタガタと体を震わせ、声も出せずにベッドの脇へと後ずさった。
「あ、あなた、誰……朝原に、何をするつもり……っ?」
輝道はその声を聞いた瞬間、凍りつく。フードの奥の瞳が、驚愕で激しく揺れる。
「……佳奈子?」
彼女は、輝道が数年前に戸籍を失い、闇の世界へ堕ちていく直前まで、すべてを捧げて愛していた「元妻」その人だったのだ。
「輝道……? うそ、輝道なの!?」
佳奈子は目に涙を浮かべ、夫の看病をしていた優しい主婦として輝道へとすがりついた。
「あなたが突然消えて、私、本当に絶望して……。そんな私を救って、妻にしてくれたのが朝原さんだったの。輝道、お願い。朝原さんを殺さないで……!」
佳奈子の涙の懇願。そして隣で困惑し、佳奈子を庇おうとする同僚の萌子。かつての愛する妻の涙に、輝道は銃を握る手がわずかにブレた。朝原卓は佳奈子を人質にしていたのではなく、本当に佳奈子を愛し、自分を救おうとしていたのか? 輝道の心に激しい揺らぎが生じた。その時、隠れ家の周囲に突如としてパトカーのサイレンが鳴り響いた。脱獄した弟の行動を予期していた、高橋勇一率いる警察の捜査班が、この建物を完全に包囲したのだ。
コメント
1件
おお、第6話!めっちゃ読み応えあったわ…! 輝道の覚悟が固まったと思ったら、まさか元妻・佳奈子がそこで看病してるとは思わんかった。しかも「♡♡♡ないで」って泣きながらすがるシーン、グッと来た。 輝道の手がブレる描写、心情の揺れがすごく伝わってきた。そして最後に勇一が包囲…続きが気になりすぎる🔥 レッドゾーンさんの作品は、強さだけじゃなくて感情の描き方が丁寧で好きだわ。次話も楽しみにしてる!