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「輝道、お願いだから……!」
涙を流し、従順な主婦として怯えていた佳奈子の顔から、次の瞬間、すべての感情が消え失せた。輝道がサイレンの音に気を取られ、ベッドの卓から視線を外したその一瞬だった。佳奈子は信じられないほどの俊敏さで間合いを詰めると、輝道の銃を握る腕を叩き落とした。
「え……?」
驚愕する輝道。佳奈子は、守るべき弱き普通の主婦ではなかった。
「ちょっと、佳奈子、何をして――」
異変に気づいた萌子が止めに入ろうとした、その時だった。
「はぁ。だから輝道、あんたとは別れたのよ。それから萌子、あんたも警察の犬の分際で親友面して近づいてきて、本当に鬱陶しかったのよね」
佳奈子は冷たい吐息混じりに言い放った。その目は凍りつくほど冷酷だった。佳奈子は躊躇なく、輝道の胸元に強烈な掌底を叩き込み、体勢を崩した輝道は背後の開け放たれた窓へと押し出される。さらに佳奈子は、パニックを起こして硬直していた萌子の胸ぐらをも掴み、輝道の後を追うように窓の外へと突き飛ばした。そこは、病院の7階。地上数十メートルの奈落。
「佳奈子……お前……っ!」
「嘘、佳奈子――っ!?」
二人の身体が、夜の暴風の中に投げ出された。
「さようなら、輝道。役立たずの元旦那。バイバイ、萌子」
佳奈子は窓の外を見下ろし、ふっと妖艶に微笑むと、静かに窓を閉めて鍵を掛けた。ベッドの上では、薬で眠らされた卓が、何も知らずに静かな呼吸を続けている。
コメント
1件
えっ、まさかの佳奈子の豹変…! ずっと普通の主婦だと思ってたのに、あの冷たい掌底と窓から突き落とす展開、本当に衝撃的でした。萌子と輝道の関係も気になってたけど、佳奈子の真の目的がまだ見えなくて続きが待ちきれないです。次話、楽しみにしてますね🥀