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現実逃避
「いってきまーす」
「あら、今日はもう行くの?」
玄関で靴を履いて外に出ようとしたとき、お母さんが私の背中に声をかけた。
いつもなら笑顔で「いってらっしゃい」って言うのに。
私は振り向く。 お母さんはちょっと驚いたような顔をしていた。
「・・・今日からはもうこんな早く出なくていいんじゃない?」
今日、から?
「? 、 なんのことかわからない・・・・いってきまーす」
「あ、、ちょっと待っ・・・」
_がちゃん
後ろから聞こえるお母さんの声を振り払って、私は無理やり外に出た。
外に出た途端、心地よい風が頬を撫でる。
私は軽く息を吸い込んだ後、足を一歩前に踏み出した。
家から歩いて約10分。
私は幼馴染の家の前に来た。
幼馴染は住宅街の入り口にカバンを持って立っていた。
幼馴染は私をにチラリと目を向けると、とことこ歩いてきた。
「しーちゃん、おはよう」
「・・・コクリ」
しーちゃんは優しく小さく微笑んで、小さな頭を下にこくんと下げた。
しーちゃんは元から無口な性格だ。
「しーちゃん、学校行こ!」
しーちゃんはにっこり笑ってくれた。
「おはよーございまーす!」
いつもみたいにできるだけ大きな声を出して朝の挨拶をする。
そして自分の席にカバンを置いて、今日の授業に必要な教材を引っ張り出す。
それらを机の中にしまったあとは、朝礼までしーちゃんとおしゃべりだ!
・・・といっても、ただ私が一方的に喋って、しーちゃんがそれに頷いてくれるだけなんだけど・・・・。
「しーちゃん!」
幼馴染の背中に声をかける。
彼女は、カバンを持ったまま机の前に突っ立っていた。
「・・・しーちゃん?」
どうしたの? と声をかけて彼女の机の上を見る。
そこには綺麗な花が白い花瓶に入れられていた。
「ぅわぁ・・・」
思わず声が漏れる。
「これ・・・どう見てもいじめのやつだよね・・・」
誰がこんな酷いこと・・・
しーちゃんの顔を見る。
彼女はどこか諦めたような・・・どこか儚げな微笑を浮かべていた。
「私が片付けるから!」
そういって私は花瓶を持って廊下に出た。
「は? 何あいつ・・・」
「前から思ってたけどさぁ・・・」
「キモ・・・」
コメント
5件
いじめだ! よくない!