テラーノベル
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目を覚ました瞬間
胸の奥に残っていた感覚が
消えていないことに気づいた
圧倒的な違和感
昨日から持ち越されたもの
いつもの時間よりも
数時間早い時間に起きていた
そんなことは滅多にない
天幕の中は薄暗く、空気は冷たい
寝具の感触も、匂いも、
すべて知っているはずのものだ
それなのに
この先何が起こるか知っている
立ち上がり、装備を確認する
銃、通信機、双眼鏡
双眼鏡のストラップは、
やはり右肩に掛かっている
昨日もそうだった
その前の日はどうだっただろうか
思い出そうとして、やめた
記憶を辿ると、途中で形が崩れる
どこまでが昨日で、どこからが今日なのか
境目が曖昧だ
外に出る
部下たちの足音
交わされる短い声
すべて、予想通り
観測地点までの道を歩きながら
ぐるりと周囲を見た
木の影
岩の位置
地面の凹凸
昨日と同じ
、、、いや
あの岩が一つ、違う
ほんの少しだけ向きが変わっている
少し小さい岩だから
誰かが蹴ったのか
それとも
胸の奥が、静かに鳴った
部下たちが配置につく
人数、装備、距離
問題はない
はずだった
顔を見る
塗りつぶされていたはずの部分が
さらに減っている
線が整理され、形が整っていく
誰かの顔だ
そう認識してしまった瞬間、
喉がヒュッと音を立てた
目の形
眉の位置
口角の癖
_知っている
だが、名前が出てこない
声は分かる
立ち位置も、癖も、全部覚えている
それなのに、顔だけが遅れている
「隊長」
自分から呼んでおいて視線を逸らす
真正面から見るのが、怖かった
「、、、何か、変だと思いませんか」
自分でも驚くほど、低い声だった
隊長は一瞬だけ黙り少しだけ眉間にシワが寄る
その動きは、いつも通りだ
「、、、そうっすか?」
そう答えた顔の隙間が、わずかに揺れた
その時、確信に近いものを抱いた
これは、偶然じゃない
一日が終わる
そのたびに、何かがずれている
位置
順番
そして、顔
夜にまた簡易ベッドに横になる
眠くない
だが、抗えない
意識が落ちる直前、考える
もし、 明日も同じ朝が来たら
それは、夢なのか
それとも
ページが、まためくられる音がした
_そして
ぱっと目を開ける
冷たい空気
少し角度が違う光
少し早い時間
起き上がる前に呟いていた
「、、、まただ」
胸の奥で、何かが静かに壊れた音がした
今日で三日目だ
なぜそう思ったのか
理由は分からない
ただ、分かってしまった
きっとこの一日は
繰り返されている
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