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## 第55話:『鉄壁の送信アンテナ』
ゼロがゼロシステムの激痛をねじ伏せ、アルヴィスと共に切り拓いたヘリオス要塞の外周突破口。
そのわずかな隙を突いて、セレスの駆る『ヴィヴァーチェ』と、特殊潜入仕様の装甲艇が要塞下部の冷却ダクトから内部へと滑り込んだ。
暗く狭いダクトの内部を抜け、潜入に成功したセレスとノア。
二人はヘリオス要塞の心臓部――地上数十メートルの高さにそびえ立つ、中央高出力送信アンテナの管理ブロックへと足を踏み入れていた。
「ハァ……ハァ……! なんとか入れたわね。ゼロたちが外で命がけで暴れてくれたおかげよ」
セレスはパイロットスーツのバイザーを上げ、銃を構えながら周囲を警戒する。
「お礼を言うなら後にして。まだ敵のメインデータ回線は生きてるわ。ルカス軍が『世界調律計画』の第1段階データをメトロポリスの暗黒街や本隊へ送信し切る前に、あの送信アンテナを物理的・情報的に完全遮断しないと、ゼロたちの苦労が全部水の泡になるわよ」
ノアはトゲのある口調で言い捨てると、携帯型の高出力ハッキング端末を中央コンソールへ強引に接続した。指先がキーボードの上で残像を描くように激しく動く。
その頃、要塞の外周部では、苛烈を極める防衛戦が続いていた。
「ハァ……ハァ……ッ!」
ウイングエックス・ディバイダーのコクピット内。ゼロは荒い息を吐きながら、血走った目で迫りくる敵機を捉えていた。
緩和装置の不調により、ゼロシステムからの情報オーバーフローがダイレクトに脳の神経を焼き焦がす。全方位から襲いかかる敵の攻撃軌道が、赤黒い残像となって幾重にも視界を埋め尽くしていた。
(痛ぇ……! 頭が裂けそうだ……! だが、セレスたちが中に突入したんだ……! 俺がここで倒れるわけにはいかねえ!!)
「ゼロ! 無理をするな! システムの負荷が高すぎる!」
アルヴィスのアルカディアが、ゼロの側面に割り込み、ビーム・ランサーで迫りくるヘリオス・ガードの首元を突き穿つ。
「分かって……るさ! でもな、あの送信アンテナが倒れるまで、ここを死守するって言ったろ!!」
ゼロは歯を食いしばり、ウイングエックスのビーム・ライフルを連続斉射。システムが見せる「コンマ数秒先の敵の回避位置」へ的確にビームを置き、接近を許さない。
満身創痍のジュードも、物陰から残存したビーム・ dagger を投げつけ、要塞の残存砲台を牽制する。
『セレスちゃん、ノアちゃん! こっちはもう限界ギリギリだぜ! 早くそのデカいアンテナを沈めてくれ!!』
「急かさないでよ、バカヴァルチャー!!」
要塞内部の管理ブロック。ノアがキーボードを叩き叩き、憤怒の声をあげる。
「チッ……! なによこのセキュリティ重装甲! アンテナのメインフレームに物理的な『鋼鉄の防護隔壁(鉄壁)』が施されてるわ! データ上でプロテクトを解除しても、この分厚い電波遮断装甲が塞がっている限り、送信機能そのものを物理破砕できない!!」
「物理的な壁なら……私のヴィヴァーチェで吹き飛ばすわ!」
セレスが要塞内のドックに待機させたヴィヴァーチェのビーム・ライフルへ手を伸ばそうとした、その時。
要塞内部の暗がりから、冷酷な機械音が響き渡った。
『侵入者を検知。送信アンテナ緊急防衛シークエンス作動』
重いシャッターが上がり、現れたのは――要塞内部の狭窄空間での戦闘に特化した、ルカス軍の自動防衛機体『アイアングローム』の集団だった。全身に耐ビーム装甲を纏い、高周波ブレードを構えた殺戮マシンが、セレスとノアへ向かって一斉に襲いかかる。
「くっ……! この狭い室内で!?」
セレスは即座にハンドガンを引き抜き、アイアングロームの関節部へ正確に弾丸を打ち込む。しかし、敵の数は数十。ノアを守りながらの狭小空間での射撃戦は極めて不利だった。
「ノア、私の後ろに隠れて! ハッキングを止めるな!」
「言われなくても止めるわけないでしょ! この程度の障害で、私が諦めると思ってるの!?」
ノアは毒づきながらも、ハッキング端末のプロファイルを書き換えていく。
「セレス! あのアンテナの防護隔壁、右側面の冷却パイプにだけ、装甲の継ぎ目があるわ! 私がハッキングで防護システムの安全装置を強制解除して、その継ぎ目の爆破ボルトを暴走させる! あなたはあの殺戮マシンどもをそこへ近づけないで!!」
「了解! ……一秒も近づかせないわ!!」
セレスのヴィヴァーチェが狭い内部ドックでスラスターを噴射。一撃離脱の最高峰機体が、要塞の狭い通路を閃光のように駆け抜ける。ビーム・サーベルの光刃が、ノアへ群がるアイアングロームの装甲を次々と切り裂いていく。
「ノア! まだ落ちないの!?」
「黙って戦いなさいよ! あと5秒……4秒……3秒……!!」
ノアの細い指が、最後のENTERキーを叩き割るように強く押し込んだ。
「吹き飛びなさい!!」
ドカーーーンッ!!
要塞の最上部に君臨していた、鉄壁の防護隔壁で守られた巨大送信アンテナ。
その基部が、内部からのオーバーロードと爆破ボルトの誘爆によって激しく吹き飛んだ。
要塞全体を揺らす凄まじい衝撃。
天を突いていた高出力送信アンテナが、くの字に折り曲がり、絶大な爆炎と共に荒野へと崩れ落ちていく。
「アンテナの完全破壊を確認! ルカス軍の外部データ送信、ストップしたわ!!」
ノアの通信が、ゼスト全隊へと響き渡る。
「やったか……ノア、セレス!!」
外周で激戦を繰り広げていたゼロは、崩れ去るアンテナの光景を目に焼き付けた。
送信機能を失い、内部からの誘爆を始めたヘリオス要塞。
ルカス軍の『世界調律計画』の第1拠点は、今まさに、完全な沈黙の瞬間を迎えようとしていた。
**次回予告**
崩れ去る要塞ヘリオス。
だが、その崩落のさなか、内部に取り残されたセレスとノア、救出に向かうも苦戦するゼロ・ドラート
残された時間はわずか! 絶体絶命の危機に、ゼロは己の脳を苛む限界突破の過負荷を押しのけ、再びあの『悪魔のシステム』を叩き起こす!
「頼む……見せてくれ! セレスたちを救う、たったひとつの『奇跡の解』をぉぉぉッ!!」
次回、『限界突破のゼロシステム』
**「たとえこの身が狂気に呑まれようと、俺は仲間を絶対に死なせはしない!!」**
コメント
1件
第55話、すごく熱かったです!外でゼロたちが死守しながら、内部ではノアのハッキングとセレスの戦闘が同時進行する二線の緊張感がたまらなかった。ノアの「バカヴァルチャー!」って毒舌と「吹き飛びなさい!!」の瞬間のカタルシスが最高でした。ゼロの「ここを死守するって言ったろ!!」もグッときた…。次回、セレスとノアが取り残される展開が不安すぎます。ゼロの限界突破、見届けます!🔥
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琴姫
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