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「おはよう、癒姫華。今日も可愛いな」こう俺が言うと癒姫華は恥ずかしそうに「ありがとぉ」とふにゃっと笑う。きっとこの時の笑顔は俺だけのものだと優越感に浸る。
「今日は美術館だよな?ユーズリア街の」
「うん!今週だけ展示される絵画があって、それを見てみたいの!」こうやって好きなことを楽しそうに話す恋人ほど愛しいものはないと俺は心から思う。
「そっか。バスで25分ぐらいか。じゃあ行こっか。」そう俺は彼女を誘導してバス停まで歩いて行った。そして、バス停の予定時刻表を見ているとバスは来た。
『こちら、シスに向かうバスとなっています。御乗車致しますか?』との運転手の問いかけに俺達は了の返事をし、バスに乗り込んだ。シスはユーズリア街のさらに先の先に行った場所にある街で行った事はない。本で読むと、そこには毎年光る“何か”があると書いてあった。毎年のいつなのかは記されていなく、上級階級の人達で街は賑わっているそうだ。
「アリンアリン。何考えてるの?」
「…何でもないよ。それよりさ──」と俺は話を変える。俺は思えば癒姫華に秘密にしている事は山ほどある気がした。
美術館の最寄りのバス停で降りると何処からか音が聞こえてきたムーン…という聞いたことのない音。一体これが何なのかを確かめようとしたが笑顔で歩くたびに弾んでいる恋人を目の前にしたらそんなことは頭から出ていった。
まあ、気にすることでもないだろと自分に言った。
美術館に入ると中はレトロな構造をしていた。それとは反対に奥に見える窓の縁は白と違っていた。
「アリンっ!あの絵画はどこにあるかな?」
「見た感じ、結構奥だと思う。期間限定だから別室みたいなところに置かれてるかも」
「なるほど、じゃあとりあえず行きますか!」と言って癒姫華は意気込んだ。こういう元気な彼女も俺は大好きだ。ちなみに、美術館だからちゃんと声量は抑えて言っている。
暫く歩くと突き当たりまで来たようで、右手側に茶色い扉と黒い扉が見えた。左手側はどうやら休憩所のようでベンチなど机がおかれていた。
「どっちかの扉の中にあの絵画があると思うけど、中は多分部屋ではなく廊下になってると思う」
「ほえー、何でわかるの?」
「建物の構造を考えたら、もしあの扉の奥が廊下ではなく部屋だとしたらよっぽど形が入り組んでいるか部屋とは呼べない形になっているはずだからだよ」