街の探索をする様になって色んな所を走り回った。街の皆は最初こそ歓迎はしてくれなかったが3日ほど経てばすっかり認めてくれるようになっていた。けれど1人だけ、私の事を嫌っている人が居た。理由は分からない。何故か目が会う度に睨みを効かせてこちらを見てきていた。1度話しかけたことがあった。「短い間ですがよろしくお願いします!」と私は元気に挨拶をした。
「…………」、、、え?無視された?いやもしかしたら聞こえなかったのかもしれない。イルカ達からここの人はとても耳が遠いと聞いていたから……
もう一度でかい声で言っといた方がいいだろうか?
「みじかいあいだですが!よろしくおねがいします!」そう大きな声で言うと向こうはびっくりした後、顔を顰めて言ってきた。
「聴こえとるわ!」え〜?私は説明出来ないような顔になって心の中でじゃあ何か言ってくれよ!とツッコミを入れてから後にした。それからだった、私が楽しそうに街を冒険し始めて目が会う度にわかりやすいぐらいに顔を逸らしてきたり、すれ違う時にギリギリ聞こえるぐらいの大きさで舌打ちをしてくるようになった。私は結構ぐったりし始めていた。するとイルカ達から心配された。
「大丈夫?あの人悪い人ではないんだよ?寧ろとっても優しくてよく昔話とかしてくれるんだ。でも一度そう考えたりするとその考え方を曲げないし、少し怖くなっちゃうんだ。気にする事はないと思うよ?」とそうフォローされた。いや、普通に気にするが?そう言いたかったが、イルカ達の真剣な顔を見てそんな事を言えなかった。でも、このままだと気まずいままだと思い私は頑張って考えた。そこでイルカ達に言われた事を思いだした事があった。もしかして人間嫌いの理由には昔話が関係しているんじゃないだろうか。そう考えた私は皆から昔話を聞いて回った。イルカ達は口を揃えて「大冒険のお話!とても聞いていて楽しいんだ。大人達は口を揃えて作り話って言うけれどお話している時の顔はとても優しいんだ。」
「お話ってどんな内容なの?ざっくりでいいから教えてほしいな。」そういうとニコニコしながら頷いて話してくれた。
「内容はこの街を飛び出した1人の少年のお話。
色んな所に行って大冒険するんだ!助けてくれる助っ人もとってもかっこいいんだよ!」と言っていた。ひとつ引っかかった。これは『1人の少年』の話なのに急に助っ人がでてくる。私は少し考えてからハッとして思った。このスケットは人間なんじゃ無いだろうか。そう考えた私はイルカ達に聞いた。
「その助っ人ってどんな感じなの?」そう聞くとイルカ達はキョトンとした顔で言った
「そんなの街の友達が駆けつけてくれたんだよ!」
と言った。私はもしかしたら人間だったがそれを伏せている事なのでは無いだろうか。これは調べると何か出てくるかもしれない。今からでも聞きに行こう!そう考えがまとまった時には既に足が向こう側に向かって進みはじめていた。 でももし人間だったらすごいじゃないか。これは気になってしまう。だんだんと急ぎ足になって楽しくなっていた。鼻歌交じりに家に向かっていたら気づくともう着いていた。私は壁をトントンと叩いたら中から
「どうしたんだい?」と優しい声が聞こえて来た。私はとても驚いた。そして私の顔を見た途端に「なんだ?」と冷たい声に変わっていた。すごい変わりようだなぁと思っていたらすぐに中に戻ろうとしていた。私は急いだ口調で言った。
「昔話を聴かせて下さい!」そう言うと中に進んでいた足が止まってこちらを振り向いた。
「誰から聞いた?」向こうはびっくりしたように聴いてきた。私はイルカ達から教えて貰ったとすぐには言えなかった。もしそれで私みたいな扱いをされてしまう事があったら私は後悔してしまうと思ったらからだ。そして私は言った
「色んな方から話を聴かせてもらいました。とてもいい話だと思ってしまったので是非貴方の口から聞きたいと思ったんです。」そう言うと急に口を開けて話し始めた。内容はとても面白かった。1人の少年が誰にも言わずに街から飛び出す所から始まる。そして一番気になっていた所に来た。
「そして彼を助けた少年がいた。」そう聞いた私は咄嗟に言ってしまった。
「その少年って彼の友人ですか?」そう言うと向こうは私の聞きたい事がわかったかのように言った。
「少年には陸を歩く事が出来る足があった。」そう聞いた途端に私は人間だとわかった。でもどうして優しい人間もいるとわかっているのに私の事を嫌うのだろうか。そう思った。そして私は言った。
「じゃあどうして私の事を嫌うんですか?」そう言うと向こうは呆れたように話を続けた。
「この話には誰も知らない続きがある。聞く覚悟があるなら中に入りなさい。」そう言われて中に案内された。そして話が始まった。
「その少年は彼と仲良くなった。それはそれは楽しそうに遊んだ。だが、彼は故郷が恋しくなった。そして家に帰ると言って少年と別れた。そして月日がたち、彼は少年の事を急に思い出した。会いに行こうと思いもう一度街を飛び出した。だが、少年はいなかった。どこにもいなかったんだ。」そう聞いて私は言った
「どうして居なかったんですか?」すると言った。
「彼と少年とは寿命の長さが違った。」そう聞いて私はドキッとした。そういえばイルカ達は何年生きることが出来るのだろうか。そう思っていると「我々の寿命は約700年程だ。そう、少年はもう亡くなっていた。彼はそれを知り絶望した。あぁ、人間はこんなにすぐに死んでしまうのか…と。」
私はそれが作り話には聞こえなかった。作り話にしては話してくれているおじいちゃんの顔が悲しそうでどこか遠くを見ている様に見えた。その様子を見た私はつい口を滑らせてしまった。
「それは本当に作り話?」そう言うとおじいちゃんは驚いてこちらをボォーっと見てきた。私は焦りながら言い訳を考えていると、おじいちゃんがポツポツと話はじめた。
「あの子達には絶望して欲しくはない。」私は疑問が確信に変わった。そっか本当に彼らの事を心配して私にあんな態度をとっていたんだ。おじいちゃんはイルカ達から聞いた通りとても優しい人だった。私は
「少年と彼の事をもっと聞きたい」と言うとおじいちゃんは嬉しそうに何処か懐かしそうに話してくれた。