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第10話、読み終わりました……!雨宮さんの「君が紡ぐその物語の先で、きっと尊くんは待っている」という台詞がすごく沁みました。あの人が残したマスターキーがじんわり温かい描写も好きです。ルービックキューブが少しずつ揃っていく感じ、物語の伏線が収束していく予感がしてゾクゾクしました。装丁家に会いに行く第二章、すごく楽しみです……!
「黄泉國さんの『初稿』……。つまり、彼の『編集された過去』ではなく本当の過去ですね」
僕は雨宮さんから受け取った、古ぼけた原稿用紙をじっと見つめた。
黄泉國さんによく似た挿絵の横には、かすれた文字でいくつかの地名と、意味ありげな記号が書き殴られている。これが、他の『編集者』たちの居場所、あるいは彼らが残した校正の跡なのだろうか。
「そうだよ」
雨宮さんは静かに湯呑みを置き、庭の闇を見つめた。
「『編集者』は互いの存在を干渉し合わない。それぞれが割り当てられた土地で、黙々と歪んだ世界の頁をめくり、整えていく。だが、尊くんは違った。彼はこの世界のどこかにいる、ある特定の人物の記憶……『自分自身の原点』をずっと探していたように見えた」
「自分の、原点……」
「彼が何のために生まれ、誰の強い未練によってこの現世に書き留められたのか。それを知る者が、残された十一人の編集者の中にいるはずだ。まずは、最も尊くんと関わりの深かった者から訪ねるといい」
雨宮さんは、そっと細い指で、原稿用紙の端に記されたひとつの地名を指差した。
『――極夜の街、眠らぬ観覧車』
「ここには、二番目の編集者である『装丁家』が潜んでいる。尊くんが最後に手を入れた未完の原稿――つまり、君という助手の存在をどう扱うべきか、彼女なら知っているかもしれない」
僕という、助手の存在。
あの人が消えたあの日から、僕の心にずっと引っかかっていた違和感。
なぜあの人は、ただの人間である僕を助手にしたのだろう。
ただのツッコミ役として、世界のノイズを逃がすためだけだったのだろうか。
それとも、僕自身もあの人の『編集』の一部だったのか。
「行ってきなさい、助手くん。君が紡ぐその物語の先で、きっと尊くんは待っている」
雨宮さんは優しく微笑み、深く頭を下げた。
その姿は、一足先に物語をハッピーエンドで終えた登場人物のように、どこか静かで満ち足りていた。
「ありがとうございました、、、行ってきます」
僕は雨宮さんの家を後にした。
夜の風は冷たかったが、ポケットの中のマスターキーは、僕の体温を吸ってじんわりと温かい。
手の中のルービックキューブの面が、またカチリと一つ噛み合った。
白と青の面が、少しだけ揃っている。
あの人が遺した未完の物語。その第二章を書き始めるため、僕は夜を徹して、わずかなお金を使い次なる目的地へと向かう電車のホームへ滑り込んだ。
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