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二人の会話を傍らで聞き流しながら、あの男のことだから理想はきっと高いんだろうなと感じていた。
彼の理想を思うと、誘われた高級ラウンジにお似合いな、美人で着飾った女性の姿が、ありありと浮かんで、
あんなおしゃれな場所で会う人とは、自分とはレベルさえもまるで違うような気がして、だったらなんで私となんて……と、思わずにはいられなかった。
……ただの気まぐれ、遊び、ゲーム、……行きずり、もう何度も考え直して、そんな結論に思い至って、あの一日だけで向こうが飽きたのなら、もうそれで構わないと、
私は、あれ以来何の接触もないままいつの間にか半月も前になったあの医師との出来事を、いい加減忘れることにした──。
あんな男になんて、いつまでも惑わされたくもなかった。
人の気持ちを考えもしないで、ただ翻弄するだけしておいて……後は全く接してさえこないなんて、本当に最低にも感じた。
……最低……そう思いながら、あの医師のことを気にかけずにはいられない自分がいて、
考えては忘れようとして、同じことをまるで堂々巡りみたいにも考えていた。
そんな自分が、なんだかひどく情けないようにも思えて仕方がなくて、半月前のたった一回きりのことなんかに、いつまで捕らわれてるんだろうと、
考えたってしょうがないのに……ただ、弄ばれただけなのに……。冷めやらない熱が蘇るみたいに、くり返し思い出してしまうことが悔しくて、そして許せなくもあった……。