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仙崎ひとみ/九龍
紙吹みつ葉
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「えっ?」
拓馬は腕の中の感触に驚く。芝生の地面に伏していた筈なのに、腕の中に人の感触を感じたからだ。
拓馬は驚いて、体を離し腕の中の人間を確認した。
「ええっ! 明菜? どうして……」
腕の中に居たのは明菜だった。しかも、今まで一緒に居た、可愛らしさの残る高校生の明菜では無く、成熟した美しさを持つ大人の明菜だった。しかも見た事のないようなセクシーな姿だ。
場所も河川敷の人混みの中では無く、見覚えのある室内。間違いなく、明菜のマンションのリビングだ。
「どうしてここに……」
驚きの余りキョロキョロ周りを見回す拓馬。
「拓ちゃんどうしたの?」
様子のおかしい拓馬に明菜が不審がって聞く。
「明菜、俺はどうしてここにいるんだ? なぜ、俺達は抱き合っていたんだ?」
拓馬は明菜の両肩を掴んで、声を上げて質問する。
「明菜? ……もしかして、記憶が戻ったの? 大人の拓ちゃんに戻ったの?」
「大人の拓ちゃん? 記憶を失った?」
「拓ちゃん、事故の後、高校二年から現在までの間の記憶を失っていたんだよ。事故の後の記憶は無いの?」
「ええっ! あ、ああ……」
拓馬の頭の中が急回転する。ようやく話が繋がった。
――俺は高校生の体にタイムスリップしていたが、逆に高校生の意識は大人の体にタイムスリップしていたのか。だとすれば高校生の俺がこの世界で活動していた筈だ。今この世界でなにが起こっているんだ?
「どうして、俺達が明菜の部屋で抱き合っていたんだ? 彩はどこにいるんだ?」
状況の分からない焦りから、拓馬は問い詰めるように、明菜に聞いた。
「彩が拓ちゃんを諦めたからよ。もうマンションから出て行こうとしている筈よ」
「なっ……どうして彩が? 俺を諦める? 高校生の俺が何かやったのか?」
明菜は自分の吐いた嘘を言えず黙ってしまう。
「頼む、教えてくれよ。彩はどうして、俺と別れようとしているんだ?」
明菜は自分の罪を告白する勇気が出ない。
「明菜……」
「私が嘘を吐いたから……」
明菜は目を瞑って、言葉を絞り出した。
「嘘?」
「事故の前、拓ちゃんは彩と別れるつもりだったって言ったの……」
「えっ?」
拓馬は驚き、両手で明菜の肩を掴む。
「どうして……どうして、そんな事を言ったんだよ」
「だって、和也君と比較されるのは辛かったんでしょ? 彩は一生和也君の事が一番だよ。あなたは同率一位にしかなれないのよ。それは嫌だったんでしょ?」
明菜の言葉を聞いて、拓馬は立ち上がった。