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鷹槻れん

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#極道
鷹槻れん

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「今日皆様にお伝えしたいのは、弊社社長補佐、新沼晴永と、藤井田ホールディングス藤井田社長のご令嬢、藤井田千紗さんとの婚約についてです」
一瞬、会場が静まり返る。
「両名の婚約は、かねてより両家の間で話を進めていたものでした。しかしこのたび、双方で話し合いを重ねた結果、婚約を解消する運びとなりました」
ざわめきとともに、再び、シャッター音が激しくなる。
盛晴は表情を変えなかった。
「そもそも、この婚約は本人たちが望んで始まったものではありません。両家の親しい関係を将来に渡って続けたいとの思いから、わたくしが勝手に決めたものでした」
晴永は黙ってその言葉を聞いていた。
盛晴が、自らそこまで明言するとは思っていなかった。
「ですが、時代も変わりました。何より、結婚するのはわたくしではない」
盛晴がわずかに間を置く。
「本人たちの人生です。彼らの意思を尊重すべきだと、考え直しました」
隣で、千紗が静かに前を向いている。
表情は穏やかだった。
「なお、本件は両家合意の上での決定です」
続いて藤井田社長が口を開いた。
「今回の婚約解消によって、両社の関係に影響が生じることはございません。今後もこれまでと変わらず、――いやこれまで以上により一層! 良好な関係を継続してまいります!」
その言葉に、盛晴も頷く。
説明が一通り終わり、質疑応答へ移った。
最初はいくつか、企業間の関係や婚約解消に至った経緯についての質問が続いた。
どれも、想定していた範囲のことばかりだ。
晴永も千紗も、求められた時だけ必要な言葉を返す。
やがて、一人の記者が千紗へ質問を投げかけた。
「藤井田千紗さんにお尋ねします。今回新沼晴永さんとの婚約を解消されたということですが、今後、新たにご結婚される予定などはおありでしょうか」
「……」
千紗がほんの一瞬、目を見開いた。
晴永には、その理由が分かった。
おそらく頭に浮かんだのは、あの男だ。
けれど千紗はすぐにいつもの穏やかな表情へ戻る。
「今のところ、具体的な予定はございません」
そう答えてから、少しだけ笑った。
「ですが――琴線に触れる相手に出会えたら、その時こそは……絶対にご縁を引き寄せるつもりでいます!」
御令嬢然とした楚々とした見た目とは裏腹、グッと拳を振り上げるようにして力強く告げられた千紗の言葉に、会場から小さな笑い声が漏れる。
晴永も、思わず口元を緩めた。
千紗も、もう自分の道を歩き始めている。
それが分かって、少しだけ肩の力が抜けた。
しかし次の瞬間。
「――では、新沼晴永さんはいかがでしょうか」
別の記者から声が飛んできた。
「今回婚約を解消なさったと言うことですが、これは……もしや新沼さんの方にすでに交際されている方がいらっしゃるからではありませんか?」
会場の空気が変わった。
晴永は内心で苦笑する。
(なんでそうなる!)
千紗にその質問が来た時点で、自分にもくるとは思っていた。一応、想定内容の書類にもその辺は書かれていた項目だ。
だが――。
(なんで俺だけ〝相手がいること前提〟みたいになってんだよ!)
千紗への質問は、ここまで意地悪ではなかった。
これではまるで、晴永に相手がいて、藤井田千紗を袖にしたみたいではないか――。
隣で盛晴がこちらを見る気配がする。
晴永は小さく深呼吸をすると、マイクへ少し顔を寄せた。
「申し訳ありませんが、お答えは差し控えさせていただきます」
「交際相手がいるかも? というのは否定なさらない、という認識で合っていますか?」
「肯定も否定もしたつもりはありませんが?」
どうにも晴永有責に持っていきたそうな記者の思惑が見え隠れして嫌になる。
(全否定するのが正解だ……)
だが、瑠璃香の存在を消すような発言をするのは嫌だった。
かといって、肯定できるほど彼女を守れるだけの準備が、まだ整っているわけでもない。
途端、会場のあちこちがざわつき始める。
コメント
2件
めっちゃはるながくんを悪者にしようとしてる! 嫌な感じの記者!
読了しました。記者会見の場面、すごく緊迫感があって引き込まれました。盛晴さんが「本人たちの人生です」と自分の決断を認めたところ、胸にくるものがありましたね……。千紗さんの「琴線に触れる相手に出会えたら絶対にご縁を引き寄せる」宣言、あの楚々とした佇まいとのギャップがめちゃくちゃ良かったです。最後の「肯定も否定もしたつもりはありませんが?」という晴永くんの返し、思わず笑っちゃいました。でもその裏にある瑠璃香さんへの想いの複雑さも感じられて、次の展開が気になります!