私の名前は「佐藤知鶴」
どこにでもいる普通の高校生……だったはずなのだけれど―――
ある日突然現れた自称女神様のせいで異世界へと召喚されてしまいました! 魔王を倒すために私達三人には特別な力を授けてくれるとか何とか言われましたけど、それと引き換えにこの世界での記憶を一切失ってしまいましたよ!? しかもその事を告げてきた本人が言うには、
『あーごめんね。実は君達が授かるはずだったチートはもう別の人にあげちゃったんだよね』
だとさ!! ふざけんなって話ですよ! 人の人生を勝手に決め付けておいて自分は責任取らないなんてどういう事ですか!? マジありえないんですけど!!!
「おいっお前ら、今日から俺らが先輩だからちゃんと言う事聞けよ?」
そう言って私達に絡んできた不良風の三人組。
彼等はこの学校でかなり有名な人達で、いつも仲間同士でつるんで弱い者をいたぶる事しか考えない最低な奴等らしい。
なので私達は関わらないようにしていたのだが、運悪く絡まれてしまったのだ。
しかし私達の後ろではアクアとダクネスが堂々と仁王立ちしている。
二人ともこの状況に怯えた様子も無く、むしろ楽しげですらあった。
「あの……すみません」
俺は恐るおそる声をかけた。二人はこちらを見る。
「なんだ?」
「何かしら?」
「その……今の状況について、教えてもらえないでしょうか」
俺の言葉を聞いた途端、二人の表情から笑みが消えた。
「お前、何も知らないのか?」
「この国に来て間もないとか?」
「あぁ……いえ。そういうわけじゃなくてですね……」
言葉を探す。
「えぇっと、ここはどこですか? それと、どうしてこんな場所にいるんです?」
「……」
「あのぉー……」
「……」
「ちょっと聞いてます!?」
「あぁんッ! うっせぇぞガキィ!」
「ひぃっ!」
「おい、俺様が話してんだろ? 邪魔すんじゃねぇよ」
「す、すみません。僕、このあたりは初めてなので道がわからなくて。それで、迷子になってしまったみたいで」
「チッ、面倒くさい奴だぜ。まあいい。お前みたいなクズはいくらでも見たことがある。ついてこい」
「ありがとうございます。助かりました」
「けっ、調子に乗るんじゃねえぞ。俺は優しいから見逃してやってるだけだ」
「はい、わかっています。本当に感謝しています」
「ふんっ、それならいい。さっき言ったとおりだ。ここは王都の外にある森だ。もうすぐ日暮れになる。とりあえず安全な場所まで連れていってやる」
「本当ですか? それはありがたいです」
「うるせえ、黙って歩け。あとその言葉づかいをやめろ」
「あっ、ごめんなさい」
「ちげぇよ。敬語なんて使うなって言ってんだよ」
「わかりまし――わかったよ。これでいいよね」
「ああ、そうだ。ったく、手間かけさせやがって……」
「もう、こんなことやめてください!」
「うるせえ!俺様の邪魔をするんじゃねえ!!」
「あぁ!?おい、ちょっと待てよ、まだ終わってないぜ?」
「もう十分ですよ。これ以上やったら死んでしまうかもしれないんですよ!」
「知るか!!俺はただ暴れたいだけだ!!」
「……っ」
「さーて、お次はどいつが相手だ?ん?」
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